2020 Fiscal Year Research-status Report
免疫抑制薬の新規薬物動態制御理論に基づくリバーストランスレーショナルリサーチ
Project/Area Number |
20K16080
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Research Institution | University of Miyazaki |
Principal Investigator |
吉川 直樹 宮崎大学, 医学部, 薬剤部長補佐 (60866383)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 免疫抑制薬 / タクロリムス / FKBP / 薬物動態 / 赤血球 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、生体内でのタクロリムスの赤血球移行におけるFKBPの役割を明らかにし、新たなタクロリムスの体内動態制御理論を構築することを目的とする。まず、これまで不明であったタクロリムスの赤血球移行機序に着眼し、FKBPが果たす役割とその寄与率を突き止める。 本研究にて、タクロリムス赤血球移行のin vitro評価系を構築した。基本条件にて、赤血球培養環境に添加したタクロリムスの約70%が赤血球に移行し、薬物細胞移行の飽和性が無いことを確認した。構築した評価系では、生体の循環血液中におけるタクロリムスの赤血球移行を模倣できており、本評価系を用いてメカニズム解析を行った。 赤血球ではFKBP12がcytosolに、FKBP13がmembraneに局在している。本研究では、赤血球内FKBPとの結合がタクロリムスの赤血球蓄積に及ぼす影響について、培養赤血球を用いたin vitro薬物取り込み阻害実験により解析した。タクロリムスのFKBPへの結合を競合的に阻害するラパマイシンを赤血球に作用させると、タクロリムスの赤血球移行の低下が認められた。また、血漿中FKBP、つまり赤血球外FKBPがタクロリムスの赤血球移行に及ぼす影響について、同様にin vitro系により解析した。赤血球培養液中にFKBP12を過剰に存在させると、FKBP12濃度依存的なタクロリムスの赤血球移行低下が認められた。しかしながら、この現象はFKBP13では認められなかった。さらに、FKBP12と予めインキュベートしたタクロリムスでは、赤血球移行の低下が認められた。 以上の結果より、タクロリムスの赤血球移行には赤血球内外のFKBPが重要な役割を果たしていることを見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
タクロリムスの赤血球移行においてFKBPが重要な役割を果たすことを明らかにし、さらに赤血球外でのFKBP12選択的作用といった関与分子種の特定にも至っている。実施計画における本年度の目的は、概ね予定通りに達成できている。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の研究計画に基づいて、FKBPとの相互作用に基づくタクロリムスの細胞内移行機序の解明、ならびにFKBPレベルの変動がタクロリムスの体内動態に及ぼす影響の解析を順次進める予定である。
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Research Products
(13 results)