2020 Fiscal Year Research-status Report
IL-12p40遺伝子を標的としたナノ核酸医薬に関する基盤研究
Project/Area Number |
20K16082
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Research Institution | University of Shizuoka |
Principal Investigator |
宋 復燃 静岡県立大学, 薬学部, 助教 (30846001)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 炎症性腸疾患 / マクロファージターゲット / IL-12p40遺伝子 / siRNA |
Outline of Annual Research Achievements |
最近の研究から、腸管組織におけるマクロファージや樹状細胞によるIL-12/23の過剰産生が炎症性腸疾患(IBD)の発症に関与すると考えられている。IBDの根源的な治療法として、IL-12/23の産生をRNA干渉薬で抑える方法が有効である可能性がある。そこで、本研究では、安全性に優れるcharge-reversible脂質ナノ粒子(LNP)にIL-12p40の発現を特異的に抑制するsiRNAを封入し、IL-12p40遺伝子サイレンシングによるIBD治療の有効性と作用メカニズムを明らかにすることを目的として研究を展開する。 初年度は計画通り、まずマクロファージ様細胞株であるRaw264.7細胞を用いてIL-12p40遺伝子の抑制効果を評価した。その結果、一般的なトランスフェクション試薬であるリポフェクタミンを用いてsiRNAを添加したところ、IL-12p40の発現が逆に増加したことから、マクロファージの炎症性応答を引き起こしたことが示唆された。一方、LNP添加群においては、IL-12p40の発現はコントロールと比べて40%程度減少した。次に初代培養マクロファージを用いて検討するため、マウス骨髄から採取した細胞を用い、マクロファージへの分化誘導を行った。またマクロファージへのsiRNA送達効率を向上するために、LNPの表面をマンノシドで修飾した。蛍光標識siRNAを封入したマンノシド修飾LNPを初代培養マクロファージに添加し、siRNAの取り込み効率を評価した。その結果、マンノシド修飾LNPは、未修飾LNPやフリーのsiRNAと比べ、有意にマクロファージへのsiRNAの取り込みが増加することが明らかになった。以上のように、LNPを用いてIL-12p40に対するsiRNAを炎症部位のマクロファージにデリバリーするための基盤を構築した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
マウスマクロファージ様細胞RAW264.7を用い、我々が開発したcharge-reversible脂質ナノ粒子(LNP)を用いることにより、IL-12p40の遺伝子サイレンシングを誘導できることを明らかにした。またマウスの骨髄から採取し分化させた初代培養マクロファージを用い、マンノシド修飾LNPの有用性を示した。当初の計画通り、LNPを用いた炎症性マクロファージへのsiRNAデリバリーシステムに関する基礎データが得られた。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度はIL-12p40に対するsiRNAを封入したcharge-reversible脂質ナノ粒子(LNP)をマウス腸炎モデルに静脈内投与し、腸炎の治療効果およびIL-12p40産生の抑制効果を検証する。マウス腸炎モデルとしては、以前の共同研究で構築したDSS急性モデル(マクロファージ優位なマウスIBDモデル)を使用する予定である。siRNA封入LNPを投与後 、マウスの体重変化を測定し、さらに腸管を摘出して炎症の抑制効果から治療効果を評価する。 また、他のナノ粒子とは異なり、我々が開発したLNPが炎症性疾患治療への応用に好適であるという研究仮説を証明する。IL-12p40に対するsiRNAを封入したLNPをマウス腸炎モデルに静脈内投与し、マウスの血清中においてIL-12を含む炎症性( TNF-α、IL-6等)および抗炎症性サイトカインの濃度変化を検討する。また、封入するsiRNAについて、複数の化学修飾siRNAを試験し、効果と安全性の観点から、化学修飾の有無、修飾する場合はその種類を決定する。
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