2020 Fiscal Year Research-status Report
多重がんに対する次世代薬物治療戦略の創出:オートファジー阻害剤を応用して
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20K16084
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Research Institution | Hokkaido University of Science |
Principal Investigator |
佐藤 恵亮 北海道科学大学, 薬学部, 講師 (60733946)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | オートファジー / アポトーシス / 抗がん剤 / 多重がん |
Outline of Annual Research Achievements |
多重がんは、原発性のがんが複数箇所に発生する疾患であり、高齢化やがん治療の発展に伴い、その患者数は世界的に増加している。本研究の目的は、性質の異なる複数のがんに効果的で副作用が少ない抗がん剤治療を見い出すことである。2020年度は、複数の培養細胞を用い、細胞障害性抗がん剤および分子標的抗がん剤とオートファジー阻害剤を併用することで効果的な組み合わせを見つけることを目指した。 培養がん細胞として、A549(ヒト肺胞基底上皮腺がん細胞)、HT29(ヒト結腸腺がん細胞)、SKBR3(ヒト乳がん細胞)を使用した。細胞障害性抗がん剤としてドキソルビシン、分子標的抗がん剤としてセツキシマブ、トラスツズマブ、オートファジー阻害剤としてクロロキンを使用した。 A549細胞、HT29細胞において、クロロキンは、ドキソルビシンによる細胞障害を促進した。さらに、Caspase3の活性化が認められたことからクロロキンによって促進されたドキソルビシンによる細胞障害はアポトーシスであることが明らかにした。また、この過程で細胞内の主要な抗酸化物質グルタチオンの現状が認められたことから酸化ストレスの関与が示唆される。A549細胞、HT29細胞、SKBR3細胞においてセツキシマブ、トラスツズマブはオートファジー阻害剤クロロキンを処理してもがん細胞の増殖抑制作用は認められなかった。以上の結果から、オートファジー阻害剤との併用で多重がんに有用な抗がん作用は細胞障害性抗がん剤ドキソルビシンという可能性が考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の計画では、2020年度中に動物実験に着手する予定だったが、コロナ禍により研究計画通り進まず動物実験に遅れが生じている。しかし、2021年度中には当初の計画通り遂行できる予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度は、多重がんモデルマウスを作成しドキソルビシンおよびクロロキンを投与することで性質の異なるがんに対し同時に効果を示すかどうか明らかにする予定である。培養細胞で認められた作用が個体レベルでも起こるかどうか検討する。
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