2020 Fiscal Year Research-status Report
ヒト脂肪幹細胞における膜動輸送特性解析と細胞医薬・薬物キャリアとしての最適化
Project/Area Number |
20K16096
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Research Institution | Osaka University of Pharmaceutical Sciences |
Principal Investigator |
孫 紅キン 大阪薬科大学, 薬学部, 研究員 (20773542)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | ヒト脂肪幹細胞 / エンドサイトーシス / アルブミン / PLGAナノ粒子 |
Outline of Annual Research Achievements |
間葉系幹細胞である脂肪幹細胞は、再生医療における素材としてだけではなく、細胞医薬としての応用が進められている。本研究では、ヒト脂肪幹細胞におけるエンドサイトーシス(膜動輸送)特性とその制御について解析を進めている。本研究では、ヒト脂肪幹細胞が組織修復作用を有するとともに、障害をうけた組織に集積する特性を有していることを踏まえ、組織保護作用を有する薬物や化合物を搭載する薬物キャリアとしての有用性が注目されていることから、より効率よく薬物の構造や物性などに大きく依存しない脂肪幹細胞への薬物などの封入性の向上を図ることを目的としている。そこで、高分子や微粒子を取り込むエンドサイトーシス特性を利用することが有用な薬物の封入方法であると考え、まだ解明が進んでいないヒト脂肪幹細胞におけるエンドサイトーシス特性を明らかにし、細胞医薬と薬物キャリアの両方の役割を兼ね備えた脂肪幹細胞の最適化を図ることを計画している。初年度においては、一般に受容体介在性エンドサイトーシスで細胞内に取り込まれることが知られるアルブミンのFITC(fluorescein isothiocyanate)標識体(FITC-albumin)を用いて、ヒト脂肪幹細胞における基礎的なエンドサイトーシス特性について解析した。その結果、ヒト脂肪幹細胞においても、アルブミンの取り込みにエンドサイトーシスが関与することと、細胞膜裏打ちタンパク質であるクラスリンとカベオリンの両方が関与することなどが示された。また、ドラッグデリバリーシステム分野で利用される薬物キャリアPLGA(poly lactic-co-glycolic acid)ナノ粒子の取り込み特性についても検討を行った結果、蛍光標識PLGAナノ粒子の細胞内取り込みには明確な温度依存性が見られるとともに、その取り込み効率はアルブミンに比べて顕著に高いことが認められた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
予定していた研究は比較的順調に進み、学会発表も今年度内に3回行っていることから、上記の判断とした。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、初年度で得られたエンドサイトーシスに関する情報に基づき、そのエンドサイトーシス特性を制御することによって、生体内に投与する際により最適な薬物搭載条件を検討する。加えて、アドリアマイシン誘発腎障害マウスに脂肪幹細胞を投与し、その生体内局在や治療効果についての検証を行うことを予定している。
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Causes of Carryover |
購入予定の試薬が年度内に納品することが難しいことが判明したため、その購入費用に相当する額を次年度に繰り越すこととしたため。
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