2020 Fiscal Year Research-status Report
鼻腔内投与によるオキシトシンの脳内送達ー脳脊髄液の循環と脳内動態制御の可能性ー
Project/Area Number |
20K16098
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Research Institution | Kobe Pharmaceutical University |
Principal Investigator |
田中 晶子 神戸薬科大学, 薬学部, 助教 (30824320)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 鼻腔内投与 / 脳内送達 / オキシトシン / 自閉症治療 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究はOXTの鼻腔内投与後の脳送達効率を改善する新たなDDS製剤を開発することで、OXT鼻腔内投与による自閉症スペクトラム障害(ASD)の治療法を構築することを目的とする。そのためには、基礎的な情報として、薬物の物性と脳内送達特性との関係を検討し、その情報に基づいた製剤設計が必要である。そこで、2020年度は、モデル薬物として、高膜透過性のantipyrine(ANP)、低膜透過性のranitidine(RAN)を選択し、鼻腔内投与後の脳移行性およびmicrodialysis法(MD法)を用いて、鼻腔から直接脳内移行した薬物の脳組織内での移動を評価した。まず、マウスに鼻腔内投与あるいは腹腔内投与し、血漿中濃度と脳内濃度(嗅球・脳前半部・脳後半部)を測定した。腹腔内投与後の ANPの血漿中濃度および脳内濃度は、鼻腔内投与群と比較して高かった。一方、RANを鼻腔内投与した場合、腹腔内投与と比較して血漿中濃度は低かったが、対照的に脳内濃度は高かった。また、脳部位別に見てみると、嗅球が最も高い値を示した。したがって、膜透過性の低いRANのような薬物は、膜透過性の高いANPと比較して鼻腔から脳への直接移行の寄与が大きいことが明らかとなった。 また、ラットの嗅球と大脳にそれぞれプローブを埋設し、嗅球プローブを介して、嗅球内にモデル薬物を投与し、その後、大脳プローブより薬物を回収した。検討の結果、膜透過性の低いRANのような薬物の脳内移動は比較的速いが、膜透過性が良好なANPのような薬物は、細胞内取込みと排出を繰り返しながら、緩やかに脳内を移動する可能性が示唆された。 以上のことから、薬物の物性によって、鼻腔から脳への移行性および移行後の脳内動態が異なる可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
コロナ感染症による緊急事態宣言により、約3ヶ月間実験ができなかったため。
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Strategy for Future Research Activity |
現在再び緊急事態宣言が出てしまったため研究の推進に難しい面も多々あるが、本研究を優先的に行う。
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Causes of Carryover |
必要物品購入後の端数であり、次年度に物品費として用いる予定である。
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