2022 Fiscal Year Research-status Report
皮膚外用剤の適正使用のための実使用に即した光安定性評価法の提案
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20K16099
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Research Institution | Mukogawa Women's University |
Principal Investigator |
湯谷 玲子 武庫川女子大学, 薬学部, 講師 (80611350)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 外用剤 / 光安定性 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、地表に到達する紫外線量は増加傾向にある。皮膚に塗布した外用剤は、直接強い太陽光に曝される場合があり、現行の光安定性試験では予測することのできない有害な事象が生じる可能性がある。そこで、真夏の晴天時の正午の自然太陽光と同等の分光分布、色温度、放射照度をもつ人工太陽照明灯を用いて、今年度は、インタビューフォームに光に不安定であることが記載されている外用剤を、前年度の方法に加えて、更に薄く塗布した際の光安定性を評価するため、光透過性の高い石英ガラス板に外用剤を塗布後、もう一枚の石英板で覆い、その上部から光照射を行った。照射前後の試料から薬物を抽出し、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いて定量した。続いて、前年度のヘアレスマウスに加え、ヒトの皮膚と構造的に類似性が高いとされるブタの皮膚を縦型拡散セルに装着し、皮膚に外用剤を塗布した後、光照射を行い、皮膚透過量の変化および光分解物の有無を検討した。適用24時間経過後、テープストリッピングにより角質層を剥離した後、表皮と真皮を分離し、皮膚の各層における薬物濃度についても測定した。ケトプロフェンを含有するクリーム剤において、製剤中のケトプロフェン含量は、人工太陽照明灯による照射時間依存的に低下し、石英ガラス板を用いることで、実際の使用量に近い、より少量の外用剤を塗布した際の評価が可能となった。ブタの皮膚を用いた検討においては、ヘアレスマウス皮膚と同様、光照射により、ケトプロフェンの皮膚透過量の減少と分解物の増加が観察された。また、皮膚の各層においても、単位組織量あたりのケトプロフェン含量の顕著な低下が見られた。これらの検討結果より、実際にクリーム剤を塗布した患部が長時間強い太陽光に曝されることによって、光線過敏症や接触皮膚炎が生じるリスクに加えて、有効成分含量の低下による薬効の減弱もみられる可能性が高いことを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
COVID-19感染拡大の影響により生じた研究計画の停滞や物品や試薬の欠品、継続的な納期の遅れなどにより研究計画の遅れが続いている。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度に引き続き、より多様な外用剤、特に光に不安定であることが報告されているが、適用後、患部を遮光する旨が記載されていない薬剤について、薄く塗布した場合の人工太陽照明灯下での光安定性および光分解物が既存の光安定性試験ガイドラインの方法により報告されているものと相違がないかどうかを検証する。また、ヘアレスマウスおよびブタの皮膚を用いた検討についても引き続き実施し、外用剤を塗布後、短時間における各層の薬物含量についても測定する。これにより、人工太陽照明灯の照射時間と皮膚の各層における薬物量の変化を解析し、ヒトの皮膚における太陽光の曝露時間と有効成分および光分解物の浸透の挙動との関係の推定につなげる。
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Causes of Carryover |
COVID-19感染拡大の影響により生じた研究計画の停滞や物品や試薬の欠品、継続的な納期の遅れなどがあったため、今後必要となる試薬や消耗品の購入費として使用する。
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