2020 Fiscal Year Research-status Report
Kupffer細胞の細胞内脂質代謝による活性化制御と肝線維化病態への関与の検討
Project/Area Number |
20K16103
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
宮崎 啓史 東北大学, 医学系研究科, 助教 (90803867)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 肝マクロファージ / 非アルコール性脂肪性肝疾患 / Kupffer細胞 / 脂肪酸結合蛋白質 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、肝マクロファージ(Kupffer細胞、KC)の細胞内脂質代謝調節による活性化制御メカニズムの解明と、KCと隣接細胞との構造的・機能的連関、およびその細胞連関による肝恒常性や肝疾患病態への影響の解析を進めている。細胞内脂肪酸の生理機能を調節すると考えられる脂肪酸結合蛋白質FABP7はKCに強く発現し、KCの機能制御に関わると考えられる。令和2年度では非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)・肝線維化モデルにおけるKCのFABP7の機能的意義について検討を行った。 FABP7遺伝子欠損骨髄移植(7KOキメラ)マウスおよび野生型骨髄移植(WTキメラ)マウスを作成し、高脂肪高コレステロール食を26週間給餌することによりNASH・肝線維化を誘導した。26週後の肝臓では高度の脂質蓄積と炎症反応が認められたが、7KOキメラマウスとWTキメラマウスの間には差がなかった。一方、肝線維化マーカー(aSMA, Collagen1, Tgfb1)のmRNA発現が、WTキメラマウスに比べて7KOキメラマウスで低下していた。さらに、それらの肝臓から単離したマクロファージのmRNAの発現を比較したところ、TgfbやMertkなど肝線維化促進作用を持つ分子の発現およびマクロファージの抗炎症性マーカーであるArg1およびPpargの発現が、WTマクロファージに比べ7KOマクロファージで低下していた。これまでに、野生型および7KOマウスの骨髄細胞から分化させたマクロファージを用いた検討では、FABP7はマクロファージの抗炎症性作用に関わることを明らかにしている。従って、肝マクロファージのFABP7は、マクロファージの抗炎症性機能制御を介して、高脂肪高コレステロール食摂取による肝線維化過程に関与することが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
おおむね研究計画に沿って、順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
今後はKCのFABP7がどのような分子メカニズムで抗炎症性機能を制御しているのか検討を行う。FABP7がKCの抗炎症性機能活性化制御機構に関与することが示されたが、NASHや肝線維化の病態過程においてKCがどのように脂質代謝を変化させ、抗炎症性機能および線維化促進機能を制御しているのかは未だ不明であり、KCの脂質代謝と機能活性化制御機構の関連についてさらなる検討を進める。 具体的には、これまでの報告から、KCは他のマクロファージと比較して脂質代謝関連遺伝子が高いことが報告されている。これらの遺伝子の発現が、高脂肪食によってどのように変化するのか、また、FABP7遺伝子欠損マウスとWTマウスではこれらの遺伝子に差異が認められるのか、単離KCのRNA sequence解析により網羅的解析を行う。差が認められた遺伝子に対して、マクロファージ細胞株を用いて、CRISPR/Cas9システムを用いてノックアウト細胞を作製し、抗炎症性機能などとの関連を検討する。また、同細胞を用いて細胞内小器官の構造的変化も、電子顕微鏡を用いて、観察を行う。
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Research Products
(1 results)