2022 Fiscal Year Research-status Report
興奮性および抑制性シナプスにおける細胞骨格アセンブリの差異の機構の解明
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20K16104
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Research Institution | Gunma University |
Principal Investigator |
一ノ瀬 聡太郎 群馬大学, 大学院医学系研究科, 助教 (80775768)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 抑制性シナプス / 接着因子 / 微小管 / タンパク質結合 |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度までに、微小管の+端とタンパク質の結合を仲介するアダプタータンパク質であるEB1が、シナプス分化に必要なTENM2と相互作用し、抑制性ポストシナプス形成を左右する可能性を示唆するデータを得た。TENM2の局在を確定するために、TENM2の細胞内ドメインに対する抗体を作成し、超解像顕微鏡dSTORMにより、TENM2が抑制性ポストシナプスに存在することを観察した。また、ノックダウン細胞において、ポストシナプス側に存在する足場タンパク質gephyrinの他、GABA(A)受容体の減少も確認できたことから、TENM2の抑制性シナプス分化誘導は、ポストシナプスにおける機能であることが確定した。
次に、TENM2とEB1の相互作用がどのような抑制性シナプスで起こっているかを考察するため、抑制性シナプスを細胞骨格分子の種類により分類することを目指した。その結果、微小管リッチなシナプス、アクチンリッチなシナプス、両方が少ないシナプスの3つが存在することがわかった。ライブイメージングの結果、微小管リッチなシナプスでは微小管のプラス端が多く集まってくることが観察され、抑制性ポストシナプスにおいて、TENM2がEB1と結合することで微小管のプラス端を集合させることが示唆された。さらに、GABA(A)受容体の表面発現をライブイメージングで観察したところ、TENM2陽性ポストシナプスにおいて、GABA(A)受容体の表面発現量が有意に増加していることがわかった。さらに、EB1とTENM2の相互作用をドミナントネガティブに阻害したところ、足場タンパク質gephyrinとGABA(A)受容体の集積が有意に減少したことから、抑制性ポストシナプスにおいて、TENM2はEB1を介して微小管のプラス端と結合することにより、抑制性シナプス分子のエンドサイトーシスの場を提供していると結論付けた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
仮説に対する裏付けが十分に行われただけでなく、抑制性シナプスを細胞骨格分子や接着分子の種類、量によって分類したことで、新たな知見が得られた。これらの結果は、抑制性シナプス分子の分布による機能の多様性についての理解を深め、各分子が神経系の正常な機能に対してどのように貢献しているかを明らかにすることが期待される。正常な機能の理解は、その破綻が引き起こす疾患への理解へとつながる。
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Strategy for Future Research Activity |
TENM2の正常な機能の理解が進んだため、その破綻が引き起こす疾患への理解を進めるために、ノックアウトマウスを作成し解析を行う。また、抑制性ポストシナプスの分化誘導を行う分子はほかにもニューロリギンやIgSF9bなども知られているため、これらの分子とTEN2の相違を調べることにより、各分子が担っている機能、関連する疾患の違いの理解へとつなげる。
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Causes of Carryover |
必要物品で、1,749円で購入できるものがなかったため、次年度交付予定金と合算の上、使用する。
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Research Products
(5 results)