2020 Fiscal Year Research-status Report
ブタ・ウサギにおける脳脊髄液の吸収機構の解剖学的・機能的研究
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20K16106
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Research Institution | University of Yamanashi |
Principal Investigator |
久冨 理 山梨大学, 大学院総合研究部, 特任助教 (60773728)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 脳髄膜 / くも膜顆粒 / 髄膜リンパ管 |
Outline of Annual Research Achievements |
これまでに研究代表者はブタ上矢状静脈洞付近における脳髄膜の形態解析を行い、古典的なCSF吸収路と考えられているくも膜顆粒(arachnoid granulation: AG)の微細形態と、硬膜においてくも膜下腔と上矢状静脈洞と連絡する流路を明らかにした。令和2年度は、これらの形態的特徴がヒトにおいても保存されているか否かを検証するため、手術検体より採取したAGならびにそれに付随した脳髄膜の微細形態解析を行い、主に以下2つの所見を得た。 (1) ヒトにおける脳髄膜において、すでにブタ脳髄膜で確認された硬膜の裂け目が見られた。TEM解析により、この裂け目は血管内皮細胞の形態に類似する細胞で内張りされていることから、アーティファクトではなく本来備わっている構造であること意味している。この解析結果は、この形態的特徴はヒトにおいても高度に保存されていることを強く示唆するものである。 (2) AGの表層部では、低密度で方向が不規則なコラーゲン線維束が主体であり、ところどころ線維芽細胞に類似する細胞が見られた。いっぽう深部では細胞が細網構造を形成しており、その隙間に表層部と同様の低密度のコラーゲン線維束が存在するといった組織構築が見られた。これまでのAGの形態については模式図による記述が多く、実態の組織構築を示した報告はほとんどないことから、今回の解析結果はCSF吸収路としてのAGの機能を理解する上で重要な知見になると思われる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定であったブタ・ウサギの脳髄膜におけるリンパ細管の形態解析、および構成分子の発現解析が遅れているが、一方で、ヒトAGの検体を計画通りに入手することができ、超微細形態の解析が順調に進んでいる。また、上記のブタ上矢状静脈洞周辺の脳髄膜の形態を記述した論文を発表し、掲載号のEditor’s choiceに選出された(Kutomi and Takeda, Microscopy, 2020)。これらを統合すると、本研究はおおむね順調に進展していると評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
令和3年度は、ブタ・ウサギの脳髄膜におけるリンパ管の形態解析を行うとともに、当初の計画通り、ウサギの脳室にトレーサーを導入し、各部位におけるトレーサーの局在を調べることで、CSF流路の特定を目指す。トレーサーにはevans blue、リンパ管造影に用いられるインドシアニングリーン、蛍光色素をラベルしたリンパ管マーカー(Lyve1など)、外来の低分子マーカー、などを用いる。ヒトAGの形態解析も継続して行い、当年度中に形態的特徴を記述した論文として投稿を目指す。
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Causes of Carryover |
COVID-19の影響により、学会、研究打合せが相次いで中止あるいはオンライン開催となり、これらに関わる旅費が当初の計画より少なかった。また、CSFの流路の解析実験のためのウサギの脳室へのトレーサー導入実験の際、小動物用脳定位固定装置を購入する予定であったが、ウサギ保定装置で十分補えると判断し、その分の購入費が少なくなった。これらの費用をトレーサー、抗体などの消耗品の購入に充てる。
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Research Products
(4 results)