2020 Fiscal Year Research-status Report
KOマウスを用いたミトコンドリア鞘形成メカニズムの解析
Project/Area Number |
20K16107
|
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
嶋田 圭祐 大阪大学, 微生物病研究所, 助教 (60779601)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | 精子形成 / 精子ミトコンドリア / ミトコンドリア鞘 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究ではSmdr3及びSmdr5遺伝子を欠損させたKOマウスの表現型を解析し,これら遺伝子がどのようにミトコンドリア鞘形成に関与しているのかを明らかにするのが第一の目的である。 Smdr3 KOマウス精子では精子中片部に局在するミトコンドリアの局在に異常が生じていることを既に明らかにしていた。このSmdr3 KOマウス精子の形態をより詳細に調べるために電子顕微鏡による観察をおこなった。すると精子頭部の形態異常・精子頭部の屈曲・アクロソームの形態異常・精子首部への異常なミトコンドリアの集積及び精子中片部におけるミトコンドリアの欠落が認められた。これらの異常がどのように生じたのかを明らかにするために抗SMDR3抗体を作製し,精巣の免疫染色をおこなった。SMDR3はStep 10-15精子細胞の首部と中片部周辺の細胞質内の2箇所に点状に発現していた。今後はSMDR3が発現している小器官の特定と,このタンパク質の欠損がどのように様々な異常につながるのかを解明することを目的とする。 Smdr5 KOマウスの表現型も同様に解析した。Smdr5 KO成熟精子ではミトコンドリアの局在に異常が生じていることを既に明らかにしていたが,電子顕微鏡で観察すると精子ミトコンドリアの内部構造に異常が生じており,通常の成熟精子でははっきりと認められないクリステ構造がSmdr5 KO精子ミトコンドリアで顕著に認められた。さらに詳細に調べるとパキテン期あたりから精子ミトコンドリアは一般的なミトコンドリアの形態から濃縮されたミトコンドリアに形態が変化し,クリステの低下が認められるが,Smdr5 KO精子ではそれらが認められないことからSMDR5は精子形成期において一般的な形態のミトコンドリアのクリステ構造を低下させて精子ミトコンドリアがミトコンドリア鞘に正常に巻き付くために必須の役割をしていることが考えられた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
表現型解析の結果,Smdr3,Smdr5ともにミトコンドリア異常が生じる原因が明らかになってきた。SMDR3はミトコンドリアに局在しておらず,ミトコンドリア鞘形成不全は二次的な異常によるものであることが分かってきたが,SMDR5はin vitro解析の結果,ミトコンドリアに共局在し,in vivoではKO精子ミトコンドリアの内部構造に異常が生じることが分かり,クリステ構造と関連していることが分かった。 それ以外にARMC12がミトコンドリア鞘形成に必須の因子であり,GK2やTBC1D21と協調的に働き,ミトコンドリア外膜タンパク質であるVDACタンパク質を足場とすることでミトコンドリア鞘形成にとって必須のミトコンドリアの適切な伸長に関わっていることを明らかにした。この研究内容については論文としてまとめて報告した(Shimada et al., ARMC12 regulates spatiotemporal mitochondrial dynamics during spermiogenesis and is required for male fertility, PNAS., 118, e2018355118.)。
|
Strategy for Future Research Activity |
免疫電子顕微鏡法でin vivoにおけるSMDR3の局在場所の特定をおこなう。また免疫沈降法を用いて相互作用する因子を明らかにし,このタンパク質のin vivoにおける役割を明らかにする。 精子がミトコンドリア鞘を形成するにあたり,かなり序盤の一般的なミトコンドリアが「精子ミトコンドリア」に形態を変化する上でSMDR5が大きな役割を果たしていることが分かってきた。in vitro培養細胞にSMDR5を過剰発現させるとSMDR5はミトコンドリアに局在するが,その発現によりミトコンドリア内部構造にどのような影響が生じているかは分かっていないので,それを電子顕微鏡法で観察する。また相互作用する因子をMS解析などで明らかにする。in vivoでSMDR5に有効な抗体を作製できないことからSMDR5にエピトープタグを付与したトランスジーンを有するトランスジェニックマウスを作出することで,SMDR5のin vivoにおける局在や相互作用する因子を明らかにする。現在トランスジェニックマウスの1世代目が作製できており,次世代が生まれ次第これらの解析をおこない,in vivoにおいてもSMDR5がどのような因子と相互作用することでミトコンドリア構造に影響を与えているかを解明する。
|