2020 Fiscal Year Research-status Report
レム睡眠行動異常症にかかわるグリシン作動性神経回路の解明
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20K16117
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
本堂 茉莉 筑波大学, 国際統合睡眠医科学研究機構, 研究員 (70639195)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | レム睡眠行動異常症(RBD) / グリシン |
Outline of Annual Research Achievements |
哺乳動物の睡眠は、ノンレム睡眠とレム睡眠に分けられる。レム睡眠時の大脳皮質は覚醒に近い状態で活動しており、夢を見ていることが知られている。通常、レム睡眠時は骨格筋の筋緊張がほぼ消失し身体が動かないようになっているが、RBD患者においてはレム睡眠中に大声で叫んだり、何かを殴るような素振りをしたりと、夢に影響された行動を示す。さらに興味深いことに、RBDと診断後の10年で7割の患者がパーキンソン病様症状をきたし、レビー小体型認知症患者の9割以上は過去にRBDと診断されている。このように、RBDは神経変性疾患の初期症状であることが近年明らかとなってきた。しかし、RBDの正確な発症部位は疎か、レム睡眠時における筋弛緩の神経メカニズムも未だに明らかになっていない。本研究計画では、この点を明らかにするために、我々が作製した新規のRBD症状を示す条件付きグリシン受容体欠損マウスを利用した解析結果を基に、責任部位の同定、神経回路の抽出、関連するグリシンニューロンの活動の操作など多角的なアプローチを駆使し、グリシンニューロンとレム睡眠中の筋弛緩との因果関係を解く。本年度は同定したいくつかのグリシンニューロンを発現する領域のうち、どの領域のグリシンニューロンがレム睡眠時に活動するのかを検討するため、レム睡眠断眠直後のレム睡眠に入眠したマウス脳を固定・摘出し、神経細胞活性の指標であるc-fos抗体を用いて、活性化ニューロン数の変化を脳全体でスクリーニングを行ったところ、レム睡眠の制御に関わるいくつかの脳領域においてレム断眠後のレム睡眠の発現に応じたc-fos活性の変化を見出した。次年度は、引続き、グリシンニューロンにおけるc-fos活性の変化を観察し、レム睡眠に関与するグリシン前運動ニューロンを明らかにしていく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究は新型コロナウイルス感染症拡大の影響で実験実施者の子が2020年4月~6月まで保育園に通園できなかったため、実施計画を延期せざるを得なくなった。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、引続き、グリシンニューロンにおけるc-fos活性の変化を観察し、レム睡眠に関与するグリシン前運動ニューロンを明らかにしていく。同定したグリシン前運動ニューロンにAAV-FLEX-Jaws-tdTomatoあるいはAAV-FLEX-ArchT-tdTomatoを発現させ、そこからRBDに関わるコリン作動性運動ニューロンへ投射する軸索に対して光抑制を与える。なお、アデノ随伴ウイルスを投与するGlyT2-iCreマウスはすでに作成しており、グリシンニューロン特異的なCreの発現もレポーターマウスおよびin situ hybridization法にて確認を行っている。これにより投射先特異的な情報伝達の遮断が可能となる。また光による制御のためレム睡眠時のみの抑制も可能であり、RBDの再現の確認を行う。
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Causes of Carryover |
本研究は新型コロナウイルス感染症拡大の影響で実験実施者の子が2020年4月~6月まで保育園に通園できなかったため、実施計画を延期せざるを得なくなった。実施計画を延期した計画分は、次年度行う。
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