2023 Fiscal Year Annual Research Report
レム睡眠行動異常症にかかわるグリシン作動性神経回路の解明
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20K16117
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
本堂 茉莉 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 特別研究員(RPD) (70639195)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | レム睡眠行動異常症(RBD) / グリシン / 前運動ニューロン |
Outline of Annual Research Achievements |
通常、レム睡眠中は骨格筋の筋緊張が消失し、夢によって引き起こされる動きが制限される。しかし、レム睡眠行動障害(RBD)患者では、レム睡眠中に大声で叫んだり、何かを殴るような素振りをしたりと、夢に影響された行動が見られることがある。近年の研究から、RBDは神経変性疾患の初期症状であることが明らかとなってきた。現在、ヒトの RBD の治療薬として GABA アゴニストであるクロナゼパムが第一指示薬として用いられているが、その副作用が問題視されており、より副作用が少なく、また異なるターゲットの治療薬の発見が求められている。我々が作成した新規のRBDモデルマウスをもとに、RBD 治療薬の探索を行った。そこで我々は、睡眠導入剤の一つであるオレキシンアンタゴニスト(スボレキサント)を RBD マウスに投与したところ、レム睡眠中の過剰な筋活動が有意に抑制された。さらに、ヒトの RBD 患者で同様に検討を行ったところ、プラセボ群と比較してスボレキサント投与群では有意にレム睡眠時の過剰な筋活動が抑制された。これらの結果から、オレキシンニューロンはグリシンニューロンとは異なる神経回路を介してレム睡眠時における筋弛緩作用を誘導していることが示唆された。オレキシンニューロンの機能的異常はカタプレキシーを伴う睡眠障害ナルコレプシーを発症する。カタプレキシーは情動脱力発作とも言われ、覚醒中突然に抗重力筋が脱力し倒れる。発症時の脳波はレム睡眠時の脳波とよく酷似しており、筋緊張はレム脱力時と同様失われる。また、カタプレキシーを伴うナルコレプシー患者の約7割がRBD を発症するため、RBD とカタプレキシーは共通の神経回路を介していることが想定される。
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