2020 Fiscal Year Research-status Report
中枢神経系による排便制御に関わる脳領域および神経回路の特定とその機能の解析
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20K16120
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
内藤 清惟 鹿児島大学, 農水産獣医学域獣医学系, 准教授 (30794903)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 排便 / 脊髄 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、ストレスによる排便障害が大きな問題となっているが、その病態は明らかになっていない。その理由として、中枢神経系による排便制御の仕組みが解明されていないことが挙げられる。特に、脳の「どの領域」の神経が「どのような神経回路」によって排便を制御しているのか、という基礎的な情報が圧倒的に不足している。そこで本研究では、これまで脊髄に対して行ってきた研究によって得られた知見を基に、排便制御に関わる脳領域と、脳と脊髄をつなぐ神経回路の特定を行い、中枢神経系による排便制御システムの解明を目指す。本研究によって、これまで脳または大腸に対して行われていた研究を、「脳-脊髄-大腸」という制御システム全体としてとらえ、この分野の研究を飛躍的に進展に貢献したい。 本年度は、本研究の基盤となる逆行性トレーサーを用いた排便制御に関わる脳領域の特定を行なった。感染した神経に蛍光タンパク質を発現させるアデノ随伴ウイルスベクターを、脊髄の排便中枢が存在する腰仙髄部に投与し、脊髄排便中枢に投射する神経を蛍光タンパク質で標識した。組織切片を作成し、蛍光タンパク質で標識された神経が存在する脳の領域を検索した。さらに、免疫蛍光染色を行うことで、蛍光タンパク質で標識された神経の性質を検討した。また、脊髄で作用する神経伝達物質の検索およびその作用メカニズムの検討を行なった。これらの結果を、英文の科学論文および国内学会にて発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、脊髄の排便中枢に投射する脳領域の検索と、その神経の性質の解明を行うことができた。また、脊髄で作用する伝達物質の検索と、その作用メカニズムを解明した。さらに、本年度の研究成果を英文の科学論文および国内学会にて発表することができた。 以上の点から、現在までの達成度として、「(2)おおむね順調に進展している」を選択した。
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Strategy for Future Research Activity |
逆行性トレーサーを用いた排便制御に関わる脳領域の検索において、脳の全領域を網羅的に検索するために、組織透明化技術を用いて全脳的な検索を行う。また、逆行性トレーサーによる標識だけでなく、神経活性化マーカーであるcFosなどを標的とした免疫蛍光染色を行うことで、特定された脳領域・神経が排便制御に関わることを検討する。また、形態学的な検討だけでなく、光遺伝学を用いて、特定された脳領域・神経を神経種特異的に活性化させ、排便が活性化または抑制されるかを検討する。
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Causes of Carryover |
現在までに検討できている神経領域および神経種の数が少なく、購入したウイルスベクターおよび抗体の数が予定よりも少なかった。また、コロナウイルスの影響により移動ができなかったため、旅費が発生しなかったことと、それに付随して実施できていない実験がある。次年度使用額は、本年度に購入予定であったウイルスベクターや抗体の購入および当初の計画通りに利用する。
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Research Products
(4 results)