2021 Fiscal Year Research-status Report
理論的リバースジェネティクス法で迫る、HCNチャネルの新たな機能的構造の解明
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20K16125
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Research Institution | Kurume University |
Principal Investigator |
中島 明子 久留米大学, 医学部, 助教 (40867024)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | cAMP / オルソログ / バイオインフォマティクス |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、データバンクに蓄積されている多様な生物ゲノム情報に視点を移して、進化の過程でタンパク質の機能に重要なアミノ酸残基は種を超えて保存される異種間の相同遺伝子(オルソログ)に着目することで、アミノ酸残基の変異の起こりにくさをパラメータ化するアルゴリズムを構築した。理論予測に基づいた変異を心臓ペースメーカーチャネル遺伝子に適応したところ、HCNチャネルのcAMP結合領域の保存性を数値化することに成功した。その領域をOlfactory marker protein(OMP)に応用したところ、やはりcAMP結合領域が進化的に保存していることが分かった。この手法をOMPタンパク全域に適用したところ、ほかに2か所の進化的保存領域を発見した。それぞれ、プロテアーゼ切断モチーフと疎水性タンパクの認識モチーフに酷似していることがわかった。これらの発見をもとに、変異導入体を作成し、タンパク発現およびプロテアーゼ認識性と細胞内局在についてHEK293T細胞を用いて研究を進めている。 研究の過程で、cAMP産生に関わる受容体検索をしていたところ、OMPやHCNチャネルが発現する視床下部において、匂い受容体(Olfr78)のcDNA発現を検出した。そこで免疫組織染色法を用いてOlfr78の局在を詳細に探索した。その結果、Olfr78は、バソプレシンニューロン・オキシトシンニューロンに強く発現することが分かった。さらに微細に観察を進めたところ、Olfr78は脳実質内のミクログリアと脈絡叢のマクロファージに特異的に発現することが分かった(Akiko Nakashima, Molecular Brain, 2022)。 引き続き、本研究提案のアルゴリズムを用いた突然変異体を用いて、OMPおよびHCNチャネルの分子レベルでの挙動の解析を行う。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究でターゲットとするHCNチャネルには、cAMP結合領域があり、その相動性をほかのcAMP結合タンパクOMPを用いて、検証することに成功した。さらにその上流にある受容体について、匂いシグナリングの視点から探索することで、Olfr78の詳細な局在を明らかにすることができた。本研究の方法論の実証が出来たことにより、さらに実験応用の可能性が広がったと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、方法論をOMPおよびHCNチャネルに応用することで発見した特徴的な領域について、アミノ酸配列に変異を導入しHEK293T細胞にトランスフェクションをしたうえで細胞内局在及び、細胞内cAMP応答性を明らかにする。具体的にはcAMP感受性レポータタンパク(pink-Flamindo:購入済み)を用いて、Olfr78刺激によるcAMPダイナミクスに与える影響を蛍光顕微鏡観察下において明らかにする。 また、実際にHCNチャネルやOMPの特定の領域について、ゲノム編集技術を用いてノックアウトマウスを作成(本学動物実験センターに依頼))し、そのフェノタイプの解明に挑む。
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Causes of Carryover |
【理由】当該年度は、新型コロナ感染症の蔓延による種々の制限の下、分子生物学実験とシミュレーション、および組織学実験を主として研究を遂行した。その過程で、新規にOlfr78の発見があったため、その解明を並行して行った。そのため動物実験費用を先送りすることになった。必要な消耗品や器具の費用等が予定使用額との差額として生じた。 【使用計画】今年度は、遺伝子の構築など分子生物学実験が終わり次第、動物での実験に移る。そのため、前年度からの繰越分は、予定されていた実験計画に基づき使用する。
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