2020 Fiscal Year Research-status Report
細胞種特異的遺伝子編集法を用いたセロトニンによる脊髄痒み調節メカニズムの解明
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20K16133
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Research Institution | Hyogo Medical University |
Principal Investigator |
古賀 啓祐 兵庫医科大学, 医学部, 助教 (50835189)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | セロトニン / 脊髄後角 / 抑制性神経 / かゆみ |
Outline of Annual Research Achievements |
痒みは、掻破により外界の寄生虫等の有害物の付着を除去することで生体恒常性維持の役割を担う。一方で、慢性的な痒みは長期的な不快感によって肉体的・精神的ストレスを引き起こし、患者の生活の質(quality of life:QOL)を著しく低下させる。さらに既存の治療薬の抗ヒスタミン薬などにも抵抗性を示すことから、そのメカニズム解明及び新規治療薬の開発が急務の課題である。本年度は、痒み感覚の伝達および調節に重要な脊髄後角の神経回路におけるセロトニンシグナルの役割解析を目的として、Cre-loxPシステムとCRISPR-Cas9システムを用いた細胞腫特異的な遺伝子編集技術の確立を行った。具体的には、抑制性神経特異的にCre酵素が発現するマウスの脊髄に、新規で作製したCre依存的にCas9酵素及び標的遺伝子に特異的なガイドRNAを発現させるAAVをマイクロインジェクションすることで、脊髄後角抑制性神経特異的にCas9酵素及びガイドRNAを発現させることを可能とした。この手法を用いることで、脊髄後角抑制性神経に発現するノルアドレナリン受容体を同神経で特異的に欠失させ、その痒み感覚制御における役割を解析して、その成果を国際科学誌に発表した。さらに、脊髄後角抑制性神経に発現するセロトニン受容体の役割の解析を目的として、セロトニン受容体を標的とするガイドRNAを作製して、細胞の実験で実際にセロトニン受容体遺伝子の遺伝子編集が可能であることを確認した。今後は、この遺伝学的ツールを使用して、行動学的および電気生理学的な解析を進める予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度は、研究代表者の九州大学から兵庫医科大学への異動のために、研究実施にやや遅れが生じた。しかしながら、研究に必要なマウスの兵庫医科大学への導入は完了しており、動物の交配体制も整っている。さらにウイルスベクターを用いた遺伝子導入の実験系を含めた様々な実験系の立ち上げも終了した。そこで、今後は順調に研究を遂行できると考えられる。また、本研究計画の土台となる研究の成果を国際科学誌に発表することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、新たに確立したCre-loxPシステムとCRISPR-Cas9システムを用いた細胞腫特異的な遺伝子編集技術を用いて、脊髄後角抑制性神経に発現するセロトニン1A受容体の役割を詳細に解析する。具体的には、すでに細胞系で機能確認済みのセロトニン1A受容体を標的とするガイドRNAを用いて、脊髄後角抑制性神経特異的にセロトニン1A受容体を欠失させ、電気生理学的評価を行った後に、行動学的な評価を行う。予備的な実験から、脊髄後角抑制性神経へのセロトニンの処置は、細胞の過分極応答を示すことから、実際にセロトニン1A受容体遺伝子を欠失させた細胞でこの応答に変化が認められるかについて評価を行う。実際に応答の抑制が認められた場合は、行動学的な検討を行う。具体的な検討内容としては、ヒスタミン依存性の起痒物質であるcompound48/80やヒスタミン非依存性のクロロキン誘発の痒み行動に影響が認められるかについて解析を行う。さらに、DCPを用いた慢性掻痒モデルに対する影響についても解析を行う予定である。
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Causes of Carryover |
本年度は4万円程度の次年度使用額が生じた。このため、次年度の消耗品の購入費に充てる予定である。
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