2020 Fiscal Year Research-status Report
インスリン分泌促進とβ細胞死の境界を決めるミトコンドリアCa2+制御因子の探索
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20K16137
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
太向 勇 日本大学, 医学部, 助手 (20836556)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | インスリン分泌 / カルシウムシグナリング / ミトコンドリア / β細胞 / MCU |
Outline of Annual Research Achievements |
インスリン分泌とβ細胞死を制御するミトコンドリアCa2+シグナル関連因子の分子実体を同定するために、関与が示唆されている遺伝子群の中で特に重要な遺伝子をノックダウンするためのshRNAコンストラクトを作製した。次にこれらのshRNAコンストラクトを用いてマウス膵β細胞株であるMIN6細胞で遺伝子をノックダウンし、細胞質及び、ミトコンドリアのCa2+動態への影響を調べた。その結果複数の遺伝子でミトコンドリアへのCa2+流入が変化する遺伝子が同定された。 以上により同定された遺伝子での中でノックダウンによりミトコンドリアへのCa2+流入を増強させる遺伝子について解析を進めた。これらの遺伝子をノックダウンした細胞で細胞質及びミトコンドリアへのCa2+動態を変詳細に調べたところ、同一細胞塊中の細胞質のCa2+動態の不一致が観察された(通常のMIN6細胞では一致する)。次にマウス単離膵島のβ細胞でも同定された遺伝子をノックダウンしたところMIN6と同様にβ細胞間での細胞質のCa2+動態の不一致が観察された。 マウス単離膵島内のβ細胞は互いに特殊な細胞間結合によりつながっているため、通常は細胞間をCa2+が拡散するため、同期したCa2+動態を示すことが知られている。これにより、一つの膵島内のβ細胞は同じタイミングで協調したインスリン放出を実現していると考えられている。本研究により、ミトコンドリアへの過度なCa2+流入が細胞質のCa2+の強調を乱すことを見出した。インスリンの放出はCa2+により制御されているため、この結果はミトコンドリアへの過度なCa2+流入はインスリン放出の協調した放出を乱すことを強く示唆し、膵β細胞におけるミトコンドリアへのCa2+流入の厳密な制御の重要性を示すという点で重要であると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1.ノックダウンコンストラクトの作製状況:遺伝子をノックダウンするためのshRNAコンストラクトの作製を行った。候補遺伝子中10遺伝子について作製した。 2.ノックダウン実験の達成状況:作製したshRNAコンストラクトで実際に遺伝子をノックダウンできることをqPCR法により確認した。ノックダウンした細胞で細胞質とミトコンドリアのCa2+動態を観察した。 3.Ca2+以外のイメージング実験の条件検討:ミトコンドリアへのCa2+流入に関与する遺伝子をノックダウンした細胞で観察予定の各種ミトコンドリアへ機能を観察するための実験条件の検討を行った。 4.予期していなかった結果について:遺伝子のノックダウンによりミトコンドリアへのCa2+流入を増強させることで同一膵島内の細胞間の細胞質Ca2+動態の同期が乱れるということを発見した。
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Strategy for Future Research Activity |
1. ノックダウンコンストラクトの作製:引き続き残りの候補遺伝子についてノックダウンコンストラクトを作製する 2.ノックダウン実験の実施:引き続き候補遺伝子をノックダウンしてCa2+イメージングを行う。 3.2の結果から遺伝子のノックダウンによりCa2+動態が変動した遺伝子のミトコンドリアの機能を評価する。 4.予期していなかった結果について:ミトコンドリアへの過度なCa2+流入が引き起こす、同一膵島内のβ細胞間のCa2+動態の同期が乱れるメカニズムについての解析を行う。
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Causes of Carryover |
COVID-19の感染拡大による緊急事態宣言中の出勤自粛により研究計画の若干の変更が生じた。予定額の1割以下という僅かな繰り越しであり、使用計画に大きな変更は生じないが、2020年度に行う予定であった培養細胞の免疫染色に用いる抗体等の購入に用いる。
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