2021 Fiscal Year Research-status Report
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20K16143
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
小山 明 (中島明) 京都大学, iPS細胞研究所, 特別研究員(RPD) (80868026)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 腸内分泌細胞 / エイジング / 腸オルガノイド / トランスクリプトーム解析 / iPS細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
腸内分泌細胞は、様々な腸管ホルモンを分泌し、消化液分泌、腸管運動、腸管免疫、食欲、代謝を制御する。腸内分泌細胞が、加齢に伴う腸の機能変化、発がんリスクの上昇、全身の恒常性破綻に与える影響はいまだ明らかではない。本研究では、トランスクリプトーム解析やiPS細胞、腸オルガノイド培養技術を用いて、腸内分泌細胞分化の加齢変化とその制御機構を明らかにすることを目的とする。 これまでに、組織学的解析により、加齢に伴う腸内分泌細胞の増加を見出していた。そこで、腸内分泌細胞サブタイプの加齢変化を明らかにするために、若年マウスと加齢マウス由来腸上皮細胞のsingle cell RNA-seq解析を行った。しかしながら、腸内分泌細胞はシングルセル化処理に弱く、解析に十分な細胞数が得られなかった。その他の腸上皮細胞については、加齢に伴う細胞構成変化や遺伝子発現変化を検出することができた。加齢に伴い発現変動する遺伝子群の上流解析から、腸上皮のエイジングを制御するシグナル伝達経路の候補を複数得た。本年度は、若年マウス由来の腸オルガノイドにおいて、これらのシグナル伝達経路の活性を操作し、加齢マウスの腸上皮組織を模倣する系の構築に成功した。さらに、加齢に伴う腸内分泌細胞増加には、複数のシグナル伝達経路が統合的に関与することを見出した。以上の研究成果について、現在論文投稿準備中である。 ヒトの腸上皮組織のエイジングにおいてもマウスと同様の分子機構が存在するのかを明らかにすることが重要である。しかしながら、ヒト小腸は健常者の検体入手が困難である。そこで、ヒトiPS細胞由来腸オルガノイドを用いた腸上皮組織エイジングのモデル系の構築を試みた。既報に基づき、ヒトiPS細胞から腸オルガノイドを作製したが、その遺伝子発現パターンは胎児様であり、老化形質を誘導する以前に成体様腸オルガノイドを作製する必要性を見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
Single cell RNA-seq解析に関して、当初の目的であった腸内分泌細胞サブタイプの解析はできなかったが、その他の細胞種におけるトランスクリプトーム解析をもとに、加齢に伴う腸内分泌細胞増加を制御するシグナルネットワークを同定することができた。さらに、マウス腸管オルガノイドを用いて、インビトロで腸上皮組織のエイジングを模倣する系を構築できたことから、腸内分泌細胞構成の加齢変化の分子機構について、インビトロで解析するための準備が整った。さらに、ヒトiPS細胞由来腸オルガノイドを作製し、ヒト腸上皮組織エイジングモデル系の構築に向けた準備が整いつつある。以上のことから、研究はおおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
加齢マウスの腸上皮組織における、腸内分泌細胞サブタイプ構成を解析するために、Hybridization-based in situ sequencingという手法を用いる予定である。さらに、マウス腸オルガノイドを用いた腸上皮組織エイジングモデル系において、腸内分泌細胞構成がin vivoを模倣できているのかについて検証する。また、ヒト腸上皮組織エイジングモデル系の構築に向けて、まずはヒトiPS細胞由来腸オルガノイドの成熟化を試みる。ヒトiPS細胞由来腸オルガノイドを成熟させる手法として、マウス体内への移植、T細胞との共培養、T細胞が産生するワイトカインの添加が報告されているため、これらの方法を用いてヒトiPS細胞由来成体様腸オルガノイドを作製する。その後、腸上皮組織エイジングを誘導するシグナルネットワークを操作し、腸内分泌細胞に与える影響を解析する。
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