2020 Fiscal Year Research-status Report
自己免疫疾患にかかわる胸腺樹状細胞の成熟機構の解明
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20K16151
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
関 崇生 国立研究開発法人理化学研究所, 生命医科学研究センター, 特別研究員 (00832205)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 樹状細胞 / 成熟 / TNFレセプターファミリー / 免疫 |
Outline of Annual Research Achievements |
1. 樹状細胞特異的にRANKを欠損するマウスの胸腺樹状細胞の解析: 樹状細胞特異的にCreを発現するCD11c-CreマウスをRANKfl/fl CD40欠損マウス (以下、cRANK/CD40 DKOマウス) と交配させ、cRANK/CD40 DKOマウスの解析を行った。胸腺内のconventional dendritic cell (以下、cDC)は、cDC1とcDC2のサブセットが存在する。生後2週齢において、cRANK/CD40 DKOマウスのみCD86を高発現している成熟cDC1が大きく減少した。 2. cDCのシングルセルRNA-seqによる網羅的遺伝子発現解析: コントロールマウスとcRANK/CD40 DKOマウスのcDCをシングルセルRNA-seq解析し、成熟cDC1とcDC2の細胞比率が大きく減少していることを確認した。さらに、RNA velocity解析 (RNA-seqの結果に含まれるイントロンの割合から細胞の分化過程を算出する解析) で成熟cDC1には、分化過程の異なるIl12bhigh cDC1とCcl17high cDC1が存在すると示唆された。 3. cDC1の成熟を誘導するシグナル因子の同定: TRAF6はRANKとCD40の下流で古典的NF-kB活性化経路を制御する分子である。TRAF6欠損マウスのcDC1を解析したところ、成熟cDC1は細胞比率が半減した。 4. cDC1の成熟が制御性T細胞の誘導に必要であることの検証: cDC1は制御性T細胞を誘導すると考えられている。そこで、コントロールマウスとcRANK/CD40 DKOマウスの胸腺Tregを解析したところ、細胞比率はわずかに減少したが、細胞数に大きな変化は見られなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は1. 樹状細胞特異的にRANKを欠損するマウスの胸腺樹状細胞の解析、2. cDCのシングルセルRNA-seqによる網羅的遺伝子発現解析、3. cDC1の成熟を誘導するシグナル因子の同定、4. cDC1の成熟が制御性T細胞の誘導に必要であることの検証、を目指した。 RANK flox/CD40 KOマウスと樹状細胞特異的にCreを発現するCD11c-Creマウスを交配させcRANK/CD40 DKOマウスを作成し、cDCの解析をフローサイトメーターで行った。コントロールマウスと比較してcRANK/CD40 DKOマウスの成熟cDC1は細胞比率が大きく減少した。予備実験で得たRANK/CD40全身欠損マウスの結果と一致し、胸腺cDC1の成熟にはRANK/CD40シグナルが関わることを証明した。同時に実験4について検証を行った。cRANK/CD40 DKOマウスの胸腺Tregは、わずかに細胞比率が減少したが、細胞数に大きな変化は見られなかった。 次いで、コントロールマウスとcRANK/CD40 DKOマウス由来のcDCをシングルセルRNA-seqで解析した。フローサイトメーターの結果と同じく、cRANK/CD40 DKOマウスでは成熟cDC1の細胞比率が大きく減少していた。予想外なことにRNA velocity解析では、成熟cDC1に分化過程の異なるIl12bhigh cDC1とCcl17high cDC1が存在することが示唆された。 実験3については、RANK/CD40シグナルの下流で働くTRAF6に着目し、TRAF6欠損マウスのcDCを解析した。TRAF6欠損マウスの成熟cDC1の細胞比率は、半減した。従って、RANK/CD40シグナルの下流で古典的NF-kB活性化経路が働いていると、示唆された。
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Strategy for Future Research Activity |
令和2年度はCOVID19の影響で、3ヶ月ほど実験が停止したが予定していた実験はほぼ終了していたため、論文投稿の準備をした。8月には一度Journal of Experimental Medicine誌に投稿したが、残念ながらReviewerの段階でRejectされた。 令和3年度は、JEMからのコメントに対する実験を追加し、再度投稿する予定である。具体的には、以下の実験を行う。5. cRANK/CD40 DKOマウス由来脾臓成熟cDC1の解析 (CD86高発現細胞の比較)、6. cRANK/CD40 DKOマウスcDCの細胞増殖の解析 (Ki67陽性細胞数の比較) 、7. cRANK/CD40 DKOマウスTreg機能解析 (T細胞移植大腸炎の抑制効果を比較)
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染拡大の影響により、学会がすべてオンライン開催となったため旅費の使用が無くなった。令和3年度も引き続き、学会等はすべてオンライン開催となることが予想されるため、論文のRevise実験にかかる費用に当てる予定である。
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