2021 Fiscal Year Research-status Report
各種Tauopathyにおいて特異的な凝集体を形成するtau単位配列の役割解明
Project/Area Number |
20K16160
|
Research Institution | Juntendo University |
Principal Investigator |
下中 翔太郎 順天堂大学, 大学院医学研究科, 特任助教 (90778747)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | Tau / 凝集 / Alzheimer病 / 皮質基底核変性症 / 進行性核上性麻痺 |
Outline of Annual Research Achievements |
2021年度においては、4R tau isoformの蓄積を特徴とするtauopathyである皮質基底核変性症(CBD)、進行性核上性麻痺(PSP)に着目し、それぞれの疾患由来のtau seedを用いることで、ADにおけるAsn-368のような凝集責任部位の探索を細胞モデルを用いて行った。まず、2020年度に行った結果を参考に、CBDに対してはtauのxxx-xxx aa、PSPに対してはyyy-yyy aaの領域に重要部位が存在すると推測し、部分的なAla置換と欠損を持たせた人工変異tauの系列を作成した。これらのtauをSH-SY5Y(ヒト神経芽細胞)に過剰発現させた後、CBDおよびPSP-tauを用いて凝集を誘導し、結果として凝集が顕著に抑制されるような変異を特定した。 最終的に、CBDにおいて2つ、PSPにおいて1つのアミノ酸残基を、その変異によりそれぞれの患者脳由来tauによる凝集を優位に減少させる部位として同定した。この結果は、他症例のCBDおよびPSP-tauを用いた場合にも再現された。 一方、Asn-368付近の配列peptideによるAD-tau凝集の抑制は、そもそも効果が弱く、再現性にも困難があったために中断した。Asn-368を欠損したゲノム編集マウスについては、現在本学の疾患モデル研究センターに委託し、作出途中である。野生型マウスに対しては、線条体へのAD-tau投与により、従来の海馬への投与よりも強いtau病理の発現が確認されたため、ゲノム編集マウスの作出完了の後は、AD-tauの線条体投与を行って、細胞で見られたAsn-368欠損の効果がin vivoでも見られるかどうか確認する。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
申請時点で計画していた、tauの353-368配列中のAD凝集に寄与する部位の絞り込みを予定通り、20年度内に達成している。本年度は他のtauopathyであるCBDおよびPSP凝集に寄与する部位の絞り込みを行い、その候補となる3つの異なるアミノ酸残基を同定した。CBD、PSPの他症例を用いた検証でも結果の再現が取れており、非常に有望な結果であると思われたが、Asn-368変異tauがAD-tauとそれ以外とで全く異なる反応性を示したのに対して、これらの変異はCBDおよびPSP-tauをはっきりと区別しないことを示唆するデータが出ている。よって、このデータがスムーズに論文化されるかはまだ確証が持てていない。単にCBDおよびPSP-tauによる凝集が阻害されるという点にだけ着目するのであれば問題はないが、例えば同じ4R tauopathyである両者を区別することに意義を見出す場合には、この変異をそのまま利用することは危険で、もう少し詳細な検討が必要である。よってこの件に関しては、CBD、PSP-tauによる凝集に必要な部位の同定に成功したという点に限っては、計画以上に進展していると言える。 先に同定されたAsn-368に関しては、20年度に試みていたpeptide inhibitorの実験が頓挫し、tau凝集阻害に向けた動きは止まってしまっている。加えて、なぜこの部位の欠損がAD-tauによる凝集を阻害するのかという分子メカニズムに関する研究はほとんど進んでおらず、物理化学的解析のためのAD-tau凝集のin vitroモデルの作成にも非常に手こずっている。。よって、Asn-368の知見を基にしたtau凝集阻害法や凝集メカニズム解明などへの展開は、非常に遅れてしまっている。しかし、現在作出途中のAsn-368欠損ゲノム編集マウスを用いた結果がなんらかの突破口となる可能性がある。
|
Strategy for Future Research Activity |
細胞モデルを用いた実験において見出したCBDおよびPSP-tau凝集に関わる3部位に関しては、疾患特異性をより注意深く検証すると同時に、tau中の当初は探索優先度の低かった候補部位にも着目して、他に有効なアミノ酸残基が存在するかどうかを確かめる。 Asn-368関連については、欠損ゲノム編集マウスの作出が完了し次第、AD-tauを線条体に注入し、WTと比較して病理の発現が低下するかどうかを検証することで、in vivoでのAsn-368の働きを確認する。また、凝集メカニズムの解明に用いるための、AD-tauを用いたin vitro tau凝集モデルの作成を試みる。単にrecombinant tauに患者脳由来tauを添加するだけでは凝集を示さなかった故に、例えば細胞内での条件に近づけるため、マウス脳lysate由来のkinaseを用いてin vitroリン酸化させたtauを用いるなどの方法を試す予定である。
|
Causes of Carryover |
当初はAD-tau凝集阻害の為の合成peptideを、効果が見られたものをベースに改変するなどして多数オーダーする予定であったが、阻害効果そのものがあまり見られないという結論に至り、この計画が立ち消えとなったため。余った分は、患者脳由来tauの細胞内導入に必須である試薬のMultifectamの購入などに充てる予定である。
|