2022 Fiscal Year Research-status Report
各種Tauopathyにおいて特異的な凝集体を形成するtau単位配列の役割解明
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20K16160
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Research Institution | Juntendo University |
Principal Investigator |
下中 翔太郎 順天堂大学, 大学院医学研究科, 特任助教 (90778747)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | Tau / Tauopathy / Tau-strain / 凝集 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、Alzheimer病(AD)等のtauopathyにおいて異常凝集を示すtauタンパクのC末端側配列が、凝集の際に鋳型となる凝集tau seedの種類の「識別」に働く機序の解明を目的とする。これまでにAsn-368の欠損およびAla置換は、その単一の変異のみでAD患者脳由来tau (AD-tau)を鋳型とする凝集を低下させることを明らかにし、The Journal of Biological Chemistry誌に報告している。 2022年度は、4R tau isoformの蓄積を特徴とするtauopathyである皮質基底核変性症(CBD)、進行性核上性麻痺(PSP)に着目し、それぞれの疾患由来のtau seedを用いることで、ADにおけるAsn-368のような凝集責任部位の探索を細胞モデルを用いて行った。2021年度の課題として、CBDおよびPSP seedingにおいて重要な部位をそれぞれ独立に同定したものの、Asn-368のようにADのみを減少させることはなく、CBD、PSPを両者の区別なく減少させてしまうという、低い特異性しか示さなかったことが挙げられる。 部位の探索を続けた結果、C末端領域に属するある3つの連続したアミノ酸残基をAlaで置換することにより、CBD seedでの凝集は減少させるが、PSP seedでの凝集には影響を与えないことがわかった。これにより、当該部位をCBD凝集に特異的に関与する部位として同定することができた。これにより、ADに特異性を持つAsn-368と、CBDに特異性を持つ今回の変異を持つtauを組み合わせることで、少なくともAD、CBDおよびPSPを、その各変異体とのseed反応性を比較して判別することが可能になった。 また、Asn-368のゲノム編集マウスの作出も完了し、in vivoでの変異効果の検証を行っていく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
申請時点で計画していた、tauの353-368配列中のAD凝集に寄与する部位の絞り込みを予定通り、20年度内に達成している。 この一連の研究で得られたノウハウを生かしたCBDおよびPSP凝集に寄与する部位の絞り込みについても、22年度にCBD凝集に特異的に寄与する部位を、ある3連続のアミノ酸残基として同定することに成功した。しかし、PSP凝集を特異的に減少させる部位については、未だに有力なものが見つかっておらず、非常な困難を感じている。 ADについてのAsn368変異を導入したゲノム編集マウスについては、陽性のマウスがなかなか得られないという困難に直面しており、22年度中の作出は叶わなかった。しかし、野生型マウスの脳にAD tauをinjectionし、内在性tauの凝集を誘導するモデルについては再現性も含めて確立できており、Asn368欠失マウスの準備ができ次第、すぐに実験に取り掛かることができる。 一方、peptideや抗体を用いたtau凝集阻害の試みおよび、欠損が凝集阻害を引き起こす詳細な分子メカニズムに関する研究の進展については、顕著な成果は見られていない。 総合すると、CBD凝集の特異的部位を見つけ、PSPを区別できるようにするという、本研究の根幹的な目的の一つを達成する目途がついたことから、「おおむね順調に進展している。」とした。
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Strategy for Future Research Activity |
Asn-368を欠損したゲノム編集マウスが23年度に作出完了したので、ホモマウスが得られ次第、各種tauopathy由来tauを脳にinjectionし、細胞モデル同様にAD seed導入マウスのみで凝集が見られなくなるかどうかを検証する。これにより、in vivoでもAsn-368が効力を持つことを示し、今後の遺伝子治療も含めた治療法への応用可能性を広げていく。 未だに同定できていないPSP特異的部位についても、当初は可能性が低いとして触れてこなかった部分を含めた検証を行っていく。 Asn-368および今回同定したCBD特異的変異を持つtauを組み合わせ、各種seedとの反応性を見ることで、少なくともAD、CBDおよびPSPを判別することは可能になったので、次はRT-QuICといった高感度in vitro検出法への応用可能性にも手を広げていく。
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Causes of Carryover |
当初はAD-tau凝集阻害の為の合成peptideを、効果が見られたものをベースに改変するなどして多数オーダーする予定であったが、阻害効果そのものがあまり見られないという結論に至り、この計画が立ち消えとなったため。 余った分としては、ゲノム編集マウスに対するコントロールとなる野生型マウスの購入費や、患者脳由来tauの細胞内導入に必須である試薬のMultifectamの購入などに充てる予定である。
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