2020 Fiscal Year Research-status Report
がん微小環境における肝星細胞と肝実質細胞の相互作用による腫瘍化メカニズムの解明
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20K16163
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Research Institution | Japanese Foundation for Cancer Research |
Principal Investigator |
羅 智文 公益財団法人がん研究会, がん研究所 細胞老化プロジェクト, 研究員 (40816998)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 細胞老化 / 脂肪肝 / 肥満 |
Outline of Annual Research Achievements |
申請者はこれまでに、肝臓の間質細胞である肝星細胞が細胞老化を起こし、プロスタグランジンE2を介して免疫細胞の抗腫瘍作用を抑制し、肝がんの進展を促進することを明らかにしてきた。しかし、老化した肝星細胞がどのような機構を介して周囲の肝実質細胞の腫瘍化を誘導するのかについてはまだ不明である。本研究の目的は、細胞老化を起こした肝星細胞と肝実質細胞の相互作用を明らかにし、脂質の代謝異常による肝がんの発症メカニズムを解明し、新たな肝がんの予防法や治療法の開発に繋げることである。そこで老化した肝星細胞が肝実質細胞の脂質代謝に与える影響を検討するため、申請者はマウスの肝臓から肝星細胞と肝実質細胞を同時に単離回収できる方法の構築を試みた。その結果、マウスの肝臓から肝星細胞と肝実質細胞を同時に単離し、回収することに成功した。更に、肥満誘導性肝がんモデルマウスの腫瘍部から肝星細胞と肝実質細胞を単離し、別々にin vitroで培養することができた。これによって、より生体に近い状態で細胞間の相互作用を解析することができるシステムの構築に成功した。また、申請者はマウス肝臓から単離した初代肝星細胞にデオキシコール酸で細胞老化を誘導したのち、初代肝実質細胞と共培養した結果、肝実質細胞に脂質の蓄積が観察された。このことから、肝星細胞の分泌因子が肝実質細胞に作用し、細胞内代謝に影響を与えていることが示唆される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は、細胞老化を起こした肝星細胞と肝実質細胞の相互作用を明らかにし、脂質の代謝異常による肝がんの発症メカニズムを解明し、新たな肝がんの予防法や治療法の開発に繋げることである。今年度に申請者はマウスの肝腫瘍から肝星細胞と肝実質細胞を同時に単離回収法の構築に成功した。この手法を確立することにより、個々の細胞における遺伝子発現解析や、生化学的な解析をすることができ、今後の肝がん発症メカニズムを解明するのに非常に重要である。更に、この細胞老化を誘導した初代肝星細胞を初代肝実質細胞と共培養した結果、脂質の蓄積が観察されことから、肝星細胞が肝実質細胞内の代謝に影響を与えていることが示唆される。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究から、申請者は老化した肝星細胞が肝実質細胞の脂質代謝に与える影響を検討するため、マウスの肝臓から肝星細胞と肝実質細胞を同時に単離回収する方法を構築した。更に、申請者は単離した初代肝星細胞にデオキシコール酸で細胞老化を誘導したのち、初代肝実質細胞と共培養した結果、初代肝実質細胞に脂質の蓄積が観察された。このことから、肝星細胞が肝実質細胞の代謝に影響を与えていることが示唆される。今後、肝実質細胞の単独もしくは肝星細胞との共培養の条件下における遺伝子発現や脂質代謝の変化を明らかにするために、次世代シーケンサー解析やメタボローム解析などより網羅的な解析を行い、代謝異常を引き起こす原因因子を同定する。最後に特定した脂質の代謝異常を引き起こす原因因子または脂質の種類をコントロールすることで、肝がんの予防や治療に応用できるかどうかを検討する。
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Research Products
(4 results)