2021 Fiscal Year Research-status Report
傷害特異的糖鎖修飾に着目した新規糸球体傷害マーカーの開発
Project/Area Number |
20K16197
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Research Institution | Fukushima Medical University |
Principal Investigator |
岩崎 剛史 福島県立医科大学, 医学部, 助手 (60838366)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 慢性腎臓病 / ポドサイト |
Outline of Annual Research Achievements |
申請者はネフローゼ動物モデル(ラットピューロマイシンアミノグリコシド腎症, 以後PAN腎症)の糸球体を単離し、RNA-seqによる遺伝子プロファイル解析を行った。その中でタンパクの糖鎖修飾に関わる複 数の遺伝子の発現が変化していることに着目した。特にガラクトースにシアル酸を付加する St6galnacファミリーの発現誘導が顕著であり、他にもNアセチルグルコサミン(GlcNac)や Nアセチルガラストサミン(GalNac)にガラクトースを付加するB3galtファミリーなども発現 が上昇していた。 このことから傷害を受けたポドサイトでは細胞表面や分泌される蛋白の糖鎖修飾が変化しており、その傷害特異的な糖鎖修飾を検出する検査系を立ち上げることで、糸球体傷害を鋭敏に検出するマーカーとして臨床診療に役立つのではないかと考えた。 ポドサイト傷害特異的な糖鎖修飾を見つけ出すために、ネフローゼ動物モデル(PAN腎症)から単離した糸球体を元にした網羅的糖鎖プロファイル解析を試みた。しかし条件検討の過程で、ポドサイトには健常状態でも細胞表面に大量の糖鎖修飾を受けた膜タンパクが存在していることや、糸球体単離の過程で尿細管細胞や血球系細胞といった他系統の細胞の糖鎖修飾の混入が避けられないことから、ポドサイト障害特異的糖鎖を見つける手段としては適当ではないと結論づけるに至った。 そこで、ポドサイト培養細胞にSt6galnac ファミリーを発現させて糖鎖解析を試みることとした。ポドサイト培養細胞に傷害糸球体で新規に発現するSt6galnac1や有意に発現が上昇していたSt6galnac2を発現させた安定細胞株を樹立し、その糖鎖プロファイルを親株と比較することでより効率よく傷害特異的糖鎖を検出できると考えた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
網羅的糖鎖修飾解析の対象として生体から単離した糸球体材料を用いた場合、ポドサイト以外の細胞も含まれるなど、実験系が複雑であることから、単離糸球体での解析は見合わせることとした。 むしろ培養細胞を材料に用いることで、よりreductionされた実験系となり、結果の再現性が高くなることが期待できる。
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Strategy for Future Research Activity |
マウスやヒト腎、hiPS細胞からのkidey organoidなどのsingle cell RNA-seqの報告でもポドサイトで発現を認める遺伝子の中にSt6galnacファミリー2~6は含まれていたがSt6galnac1は検出されていなかった(Park J, et al. Science 2018, Tracy T, et al. Dev Cell 2019)。 申請者が行ったRNA-seqでは健常糸球体ではSt6galnac2,3,4,6のmRNAが検出されていたが、傷害ポドサイトで有意な発現上昇を認めたものはSt6galnac2のみであった。今後、ポドサイト培養細胞にSt6galnac1, 2を発現させ、細胞表面に発現する膜タンパクの糖鎖修飾を親株と比較する。
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Causes of Carryover |
糖鎖修飾を検出する質量分析や、その結果から得られた傷害ポドサイト特異的な糖鎖修飾を認識する抗体を作成する計画 が延期されたため、次年度使用額が発生した。 今後、実施を延期した抗体作成などに予算を使用する予定である。
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