2020 Fiscal Year Research-status Report
STILによるタイトジャンクション減弱機構の解明と非浸潤性乳管癌病理診断への応用
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20K16205
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Research Institution | Aichi Medical University |
Principal Investigator |
伊藤 秀明 愛知医科大学, 医学部, 講師 (90711276)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 乳癌 / タイトジャンクション / ソニックヘッジホッグ / 細胞極性 / 浸潤 |
Outline of Annual Research Achievements |
乳癌をはじめとする癌細胞では、細胞接着の減弱及び細胞極性の喪失により浸潤が引き起こされると考えられている。特に、非浸潤性乳管癌では、細胞接着の変化やそれに伴う細胞極性の喪失が浸潤性乳管癌に至る過程で生じていると考えられている。しかし、その分子メカニズムはこれまでほとんど明らかにされていない。我々は乳癌で発現が亢進しているヘッジホッグ関連因子・中心小体複製関連因子であるSTIL(SCL/TAL1 interrupting locus)がTRAF4を介してタイトジャンクションの減弱を引き起こしていると考えられる知見を得た。本研究では、STILによるタイトジャンクション減弱機構を分子細胞生物学的手法と病理組織学的解析の両面から明らかにし、病理組織診断におけるこれまでにない非浸潤性乳管癌の浸潤リスク評価法の確立を目指している. 本年度は、乳癌培養細胞でProximity ligation assay(PLA法)を施行することによりSTIL-TRAF4の結合をin situで確認した。また、タグ付きタンパク質を用いた免疫沈降法によりSTIL-TRAF4の結合も確認している。これら成果は、細胞中でSTIL-TRAF4が複合体を形成していること示唆する結果である。 また本年度、蛍光を付加したマウスSTILをヒトSTIL特異的siRNAと同時に導入することにより、生細胞中でSTILを可視化することを可能にした。今後、蛍光標識したTRAF4及び他の関連因子を乳癌培養細胞に導入し、生細胞内で細胞接合部を経時的に観察することにより乳癌におけるSTIL-TRAF4のタイトジャンクション減弱機能について明らかにする予定である。 病理組織の解析については、次年度中に染色の予備検討を完了させ、非浸潤性乳管癌、微小浸潤癌を含む浸潤性乳管癌の病理組織切片について解析を予定している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、以下の研究成果を得た。 STILやTRAF4の局在や、複合体形成の確認を培養細胞で行った。まず複数の乳癌培養細胞(MCF7, CAL51等)で、細胞接着部にSTIL及びTRAF4が集積していることを蛍光免疫染色で確認した。また、PLA法により、STILとTRAF4が複合体を形成していることをin situでも確認した。このPLA法による、STIL-TRAF4複合体シグナルは細胞質全体に散在性にもみられ、STIL-TRAF4の複合体ごと細胞間へリクルートされている可能性が示唆された。さらに、蛍光を付加したSTILを細胞内に導入する予備実験を行った。乳癌培養細胞にヒトSTIL特異的siRNAとGFP付加マウスSTILを同時導入する蛍光観察システムを作製した。病理組織切片の染色実験については、PLA法の至適条件の検討を行った。以上実験は順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、乳癌培養細胞の種類を増やし、蛍光免疫染色による細胞接合部へのSTIL及びTRAF4等タイトジャンクション関連因子の集積、PLA法によるSTILとTRAF4やタイトジャンクション関連因子の結合解析を継続して行う予定である。さらに、TRAF4やタイトジャンクション関連因子を蛍光標識し、すでに作製した蛍光付加マウスSTILと同時に乳癌培養細胞にトランスフェクションを行い、リアルタイムでSTIL-TRAF4の挙動とタイトジャンクション変化について解析を行う予定としている。 また、STILとTRAF4の結合部位に関して、タグ付き変異体を用いた免疫沈降実験により結合ドメインの同定を行う予定である。 さらに、非浸潤性乳管癌や微小浸潤癌を含む浸潤性乳管癌の症例について予備検討完了後、免疫染色及びPLA法での解析を予定している。
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Causes of Carryover |
本年度は、蛍光を付加したTRAF4、タイトジャンクション関連因子の組み換え体の作製中であり、そのために生細胞中でのイメージング実験は施行しておらず、残金が生じている。次年度にこれら蛍光付加組み換え体を完成させ、実際に乳癌培養生細胞に導入し、その挙動を観察する予定であり、次年度の経費に加えて使用する予定である。
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