2022 Fiscal Year Research-status Report
STILによるタイトジャンクション減弱機構の解明と非浸潤性乳管癌病理診断への応用
Project/Area Number |
20K16205
|
Research Institution | Aichi Medical University |
Principal Investigator |
伊藤 秀明 愛知医科大学, 医学部, 講師 (90711276)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
|
Keywords | 乳癌 / タイトジャンクション / ソニックヘッジホッグ / 細胞極性 / 浸潤 |
Outline of Annual Research Achievements |
乳癌をはじめとする癌細胞では、細胞接着の減弱及び細胞極性の喪失により浸潤が引き起こされると考えられている。特に、非浸潤性乳管癌では、細胞接着の減弱化やそれに伴う細胞極性の喪失が浸潤性乳管癌に至る過程で生じていると考えられている。しかし、その分子メカニズムはこれまでほとんど明らかにされていない。我々は乳癌で発現が亢進しているヘッジホッグ関連因子かつ中心小体複製関連因子であるSTIL(SCL/TAL1 interrupting locus)がTRAF4を介してタイトジャンクションの減弱を引き起こしていると考えられる知見を得た。本研究では、STILによるタイトジャンクション減弱機構を分子細胞生物学的手法と病理組織学的解析の両面から明らかにし、病理組織診断におけるこれまでにない非浸潤性乳管癌の浸潤リスク評価法の確立を目指している。これまでに、乳癌を含む培養細胞を用いてProximity ligation assay(PLA法)及び免疫沈降法を施行することによりSTIL-TRAF4の結合をin situおよびin vitroで確認している。これらの成果は、細胞中でSTIL-TRAF4が複合体を形成していること示唆する結果である。 昨年度、タイトジャンクションの減弱メカニズムに、STILによるCortactinのタイトジャンクションへの集積及びリン酸化が関与していると考えられたため、STILとCortactinの複合体形成能について免疫沈降法を中心に解析を進めた。またCortactinの活性化型変異体および不活性化型変異体を作製し、解析を追加した。病理組織の解析については、微小浸潤癌や非浸潤性乳管癌を中心に解析を進めた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度はタイトジャンクション減弱に関連すると考えられたCortactinとSTILの結合について詳細な解析を追加し、遂行している。また、Cortactinの各ドメインのタグ付き変異体を作製し、STILの変異体とともに免疫沈降法中心として解析を行い、それぞれの結合部位の確認を進めている。 さらに、STILノックダウン乳癌細胞に対し、Cortactin活性型・不活性型変異体の導入実験を行うため、Cortactinのconstitutively activeな変異体およびinactiveな変異体も作製した。これら変異体を、乳癌培養細胞に導入し、タイトジャンクションの変化を解析する予定である。 乳癌病理組織検体に関しては、症例をさらに追加し、免疫染色により解析を進めている。
|
Strategy for Future Research Activity |
引き続き、STIL-Cortactinの結合ドメインの検索を行うとともに、Cortactin活性型変異体、不活性型変異体を乳癌培養細胞に導入し、これらのタイトジャンクション部への集積およびタイトジャンクションの減弱を解析する予定である。 病理組織学的解析に関しては、微小浸潤癌や非浸潤性乳管癌の症例をさらに追加し、タイトジャンクションの減弱及びSTIL、Cortactinの発現、Cortactinのリン酸化の程度について解析を進める予定である。
|
Causes of Carryover |
STILとタイトジャンクションの関連について、一定の知見は得たと考えているが、さらに精緻な解析を行うため、Cortactinの各ドメインにタグを付した変異体や、Cortactinのconstitutively activeな変異体を含むベクターの作製を行っている。次年度にこれらを用いた免疫沈降実験や活性型・不活性型Cortactinの乳癌培養細胞への導入実験等を行う予定である。
|