2020 Fiscal Year Research-status Report
HTLV-1キャリアおよび成人T細胞性白血病リンパ腫患者における病態進展の解明
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20K16208
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Research Institution | Kurume University |
Principal Investigator |
山田 恭平 久留米大学, 医学部, 助教 (60838423)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 成人T細胞性白血病・リンパ腫 / HTLV-1 / mRNA |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、ホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)検体を用いてキャリアやATLLなどにおけるHTLV-1関連mRNAの発現をin situで検討する。さらに、mRNA発現の解析結果を基に免疫染色等によりタンパクの発現との関連を検討する。これらの結果を解析し、mRNAおよびタンパクの発現と臨床病理学的特徴に基づくキャリアやATLLなどの診断および治療の層別化を行うことを目的としている。 2020年度では、ATLL 88症例のFFPE検体を用いて、HBZやtaxのmRNA発現をin situで検討した。mRNAの発現量を中央値で2群にわけ臨床病理学的特徴の差異を検討したところ、HBZ mRNAの低発現例は皮膚浸潤例が有意に多く、またtax mRNAの高発現例はPD-1陽性の腫瘍組織浸潤リンパ球の数が有意に増加していた。さらに、tax mRNAの発現が非常に高い症例を少数ながら同定し、それらの症例はHLA class Iやβ2ミクログロブリンの発現が有意に低下し予後不良であることが明らかになった。以上の結果を論文化した。 上記の成果により、ATLL症例においてHTLV-1関連mRNAの発現と腫瘍免疫を含む臨床病理学的特徴との関連が示唆された。現在は、追加のATLL症例、キャリアにおける反応性リンパ節炎やその他の悪性リンパ腫について引き続き症例集積を行い、随時tissue microarrayを作製する。特に、HTLV-1関連mRNAの発現と腫瘍免疫関連蛋白を中心としたタンパクの発現との関連を病理標本上で詳細に検討するため、通常の免疫組織化学のほか、蛍光多重染色による検討を本年度導入する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2020年度は、88例のATLL患者の組織標本(FFPE)を用いて、HBZ mRNAとtax mRNAの in situ hybridizationを行い、ATLLの臨床病理学的特性との関連を検討した。 HBZ mRNAシグナルの中央値はATLL細胞1000個あたり795.2(0.4-4013.1)であり、tax mRNAシグナルの中央値はATLL細胞1000個あたり5.1(0.1-891.2)であった。各々の中央値で2群間にわけ比較したところ、HBZ mRNAの低発現群は、皮膚浸潤が有意に多く観察された(P = .0283)。また、Tax mRNA高発現群は、PD-1陽性腫瘍浸潤リンパ球(TIL)の数が有意に増加していた(P <.0001)。さらに、本研究ではtax mRNAの発現が400以上と非常に高い症例を7例同定した。これらの症例は、HLA class Iおよびβ2-microglobulinの発現が有意に低下していた(各々P = .0385, P = .0124)。さらに、これらの症例は、その他の群に対して有意に予後不良であった(MST 22.6か月、 95%CI [13.7-41.7])(P = .0499)。以上の結果により、ATLL症例においてHTLV-1関連mRNAの発現と腫瘍免疫を含む臨床病理学的特徴との関連が示唆された。これらの成果を論文化した。 現在は、追加のATLL症例、キャリアにおける反応性リンパ節炎やその他の悪性リンパ腫について引き続き症例集積を行い、随時tissue microarrayを作製する。特に、HTLV-1関連mRNAの発現と腫瘍免疫関連蛋白を中心としたタンパクの発現との関連を病理標本上で詳細に検討するため、通常の免疫組織化学のほか、蛍光多重染色による検討を本年度導入する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
①今年度は、リンパ節の生検検体のみを対象としており、ATLLの限られた臨床病型の症例を検討していた。今後は、皮膚など別の病変を同時に解析することで、臓器ごとの病理学的特徴を明らかにしていく。 ②今年度は、HBZとtaxのmRNA発現とATLL/腫瘍免疫関連蛋白の発現との関連のみを検討した。今後は、多重染色によりATLL細胞と周囲微小環境の細胞との関連をより詳細に解析し、遺伝子異常との関連を随時検討する。 ③今年度は、ATLL88例という比較的限られたサンプルサイズでいくつかの臨床病理学的特徴の差異を同定できた。今後は、ATLLの症例をさらに拡大するとともに、キャリアを含むHTLV-1陽性のリンパ増殖性疾患についてもHTLV-1関連mRNAの生物学的意義を検討していく。
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Research Products
(1 results)