2020 Fiscal Year Research-status Report
miR-143-ナノ脂質抱合粒子を用いたKRAS変異多発性骨髄腫治療法の開発
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20K16216
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Research Institution | Gifu University |
Principal Investigator |
平島 一輝 岐阜大学, 大学院連合創薬医療情報研究科, 特任助教 (50826633)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | マイクロRNA / 核酸医薬 / 多発性骨髄腫 |
Outline of Annual Research Achievements |
多発性骨髄腫はB細胞に由来する血液腫瘍で,全身障害(貧血,骨障害,腎障害)を来しうる重篤な疾患である.多発性骨髄腫に有効な治療薬は少なく,プロテアソーム阻害剤やサリドマイド誘導体が用いられるが,不応症例には有効な治療手段がないことが問題である.この薬剤不応性にはRAS変異の関与が強く示唆されており,実際に,KRAS変異例ではボルテゾミブ治療後再発時の生存期間は有意に短い.さらにRAS変異はきわめて多くの多発性骨髄腫症例(20-45%)に認められるため重要な治療標的と考えられる. しかし,RASタンパクは結合可能部位が極めて少ないため低分子化合物による活性阻害が難しい.加えて,RAS分子経路は多数の代償活性化機構を持つため,RAS単独の阻害では治療効果が限定的である.そのため,これまでの低分子化合物による検討では,RASを標的とする治療薬の開発は困難を極めている. そこで我々は,RNA干渉によってRAS分子経路全体を制御するマイクロRNA-143 (miR-143)に着目した.miR-143は,RASのみならずエフェクター経路の複数の分子(Akt,ERK,SOS1)をRNA干渉により同時に抑制できるため,極めて有効なRASネットワークの阻害薬となりうる.実際に我々は,miR-143に化学的修飾を施してRNase耐性・阻害活性を向上させたmiR-143#12を開発して,複数の動物モデルで腫瘍縮小効果を確認している. 今回の研究では,上記の化学修飾miR-143#12にLiponanoparticle (LNP)処理を施して腫瘍細胞への送達性を向上させたmiR-143#12-LNPのKRAS変異多発性骨髄腫マウスモデルにおける抗腫瘍活性を評価する.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本課題では,令和2年度に①モデルマウス改善と血液指標の確立と②投与物質・方法の改善と比較検討を行った. 【①モデルマウス改善と血液指標の確立】研究開始当初使用していたモデルは,ヒトKRAS変異骨髄腫細胞(RPMI8226)が骨髄・脾臓に播種するものの,骨髄への定着率はおよそ60-70%程度で検討に多くのマウスを必要とする状況であった.また,各臓器の腫瘍細胞量は組織学的(HE,免疫染色)・生化学的(ウエスタンブロット)に分析できる状態だったが,全身の腫瘍細胞量を総合的に定量する方法がなかった.そこで,シクロホスファミドの前処置をモデル作成に組み込むことで,血中λL鎖量を安定的に検出できるモデルの作成に成功した.また,骨髄への定着率を著しく向上させることができた. 【②投与物質・方法の改善と比較検討】LNP組成を変更することで活性の変化を検討する予定であったが,作成スケールと調節から投与までの期間を変更することで,従来よりも活性が10-20倍程度高いLNPを作成することができた.また,投与核酸であるmiR-143#12の血中半減期を計算し,in vitroでのIC50と照らし合わせて最適な投与濃度を計算した.
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Strategy for Future Research Activity |
今後は,総合検討として上記①,②で決定した改善モデル・投与方法・評価方法にて,miR-143#12-LNPの抗腫瘍効果を評価する.具体的には,各臓器腫瘍細胞量(ヒト細胞特異的マーカーHLA-A免疫染色),増殖抑制(Ki-67免疫染色),全体腫瘍細胞量(λ軽鎖),機序の確認(ウエスタンブロット,免疫染色を使用した標的遺伝子,KRAS, NRAS, Akt1, ERK2, SOS1発現抑制)に着目して,miR-143#12-LNPのKRAS変異多発性骨髄腫における治療有効性を評価する予定である.
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