2021 Fiscal Year Research-status Report
MicroRNA Regulation of Prickle2 Expression
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20K16232
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Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
樋口 裕城 琉球大学, 医学(系)研究科(研究院), ポスドク研究員 (20852982)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | マイクロRNA / Prickle / 神経新生 / ASD |
Outline of Annual Research Achievements |
自閉スペクトラム障害(Autism spectrum disorder, ASD)は遺伝的要因が複雑に関与して起こる神経発達障害であり、その病理学的基盤の解明や予防法・治療法の開発が強く望まれている。神経細胞のシナプスに発現しているPrickle2はASDやてんかんとの関連が示唆される平面内細胞極性調節因子の一つであり、その発現制御が正常な神経機能の維持に必須である。研究代表者はバイオインフォマティクス解析により、Prickle2 mRNAの3'非翻訳領域を標的とし得るマイクロRNA(miRNA)を抽出し、さらに分子生物学的手法によりPrickle2の制御因子として3種のmiRNAを同定した。また、この過程において細胞株や神経初代培養において特定のmiRNAを強制発現する手法やレンチウイルスベクターを用いて特定のmiRNAをノックダウンする手法を確立した。 さらに、研究代表者は複数のmiRNAが脳内での神経新生に関与している可能性を見出した。神経新生は哺乳類の脳内で成熟後も続く神経前駆細胞の増殖・分化・成熟とそれによる中枢神経系の維持・再構築のための内因性機構であり、その破綻はASDのみならずうつ病・統合失調症等の精神疾患、アルツハイマー病等の加齢性疾患と密接に関係している。成熟した中枢神経系において神経新生を制御するシステムとしてセロトニン神経系の関与が知られている。現在、研究代表者はmiRNAの精神神経疾患関連症状への関わりや神経新生機序を介した作用メカニズムの解析を進めている。具体的には、セロトニン刺激による神経新生の過程では、セロトニン神経の投射先である海馬でmiRNA発現が変化し、神経新生を制御する成長因子、その受容体群から成る信号系が強化されると想定しており、マウスモデルを利用した行動解析・組織学的解析・網羅的遺伝子発現解析による多面的検証を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画していた神経細胞におけるPrickle2のmiRNAによる制御のみならず、それらのmiRNAの精神神経疾患やその治療における役割の解析が進んでおり、順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
・精神神経疾患の病態・治療における脳内miRNAの役割のより詳細な理解を目指す。 ・miRNAの精神神経疾患との関与は近年ASDのみならずうつ病や神経変性疾患等についても報告されている。本研究でも、miRNAー遺伝子発現ー疾患様行動という一連の関係を詳細に検討し、疾患との関係を明らかにする方針である。そのための行動解析手法の習得・確立が既に進んでいる。 ・最終年度にあたり、研究成果を国内外に広く発信していく。
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Causes of Carryover |
理由:次世代シーケンサーを使用した網羅的遺伝子発現解析が予定よりも安価で実施できたため、次年度使用額が生じた。 使用計画:実験動物の購入費用や実験用試薬・消耗品の価格上昇に対応する費用として使用する。
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