2020 Fiscal Year Research-status Report
ピロリ菌の小さなRNAによる胃炎症メカニズムの解明
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20K16244
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
木下 遼 大阪大学, 微生物病研究所, 助教 (50846566)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | ピロリ菌 / small RNA / TLR3 |
Outline of Annual Research Achievements |
ピロリ菌はヒトの胃に感染する細菌で、胃炎などの消化器疾患を引き起こす。その一方でヘリコバクター・ピロリ(ピロリ菌)のリポ多糖(LPS)は低いエンドトキシン活性しか示さない。また、胃粘膜上皮細胞ではLPS受容体のToll like receptor 4(TLR4)の発現が低い。そこで本研究では、ピロリ菌の保有するsmall RNA(sRNA)に着目し、RNA受容体であるTLR3を介した胃炎症メカニズムの解明を目指す。令和2年度は、下記項目を実施した。 1)ピロリ菌由来のトータルsRNAを胃の細胞に直接添加すると、炎症反応が惹起されることを確認した。ピロリ菌のトータルsRNAを抽出し、胃粘膜上皮細胞にふりかけ、ウェスタンブロッティングを行なった。その結果、double-stranded RNA(dsRNA)受容体であるTLR3依存的に炎症が引き起こされることを見出した。しかしながら、ピロリ菌のsRNAはsingle-stranded RNA(ssRNA)のため、どのsRNAの二次構造領域がdsRNAとしてTLR3に認識されるかを同定する予定である。 2)TLR3とTLR4の発現量を複数の胃粘膜上皮細胞を用いてリアルタイムPCRで解析した。これまでの報告と同様に胃粘膜上皮細胞でのTLR3の発現量はTLR4に比べて発現量が高い、もしくは同程度であることを確認した。 3)ピロリ菌の細胞外に存在するsRNAをピロリ菌細胞培養上清液を用いてリアルタイムPCRで解析したところ、複数のsRNAを同定することに成功した。同定されたsRNAは多くのピロリ菌で保存されていることを確認している。 以上の結果から、ピロリ菌による胃炎には、ピロリ菌の保有するsRNAおよび胃粘膜上皮細胞のTLR3が寄与することが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ピロリ菌のsRNAによる胃炎症メカニズムの一端を明らかにできた。しかし、新型コロナウイルス感染拡大により、一部の実験を延期し令和3年度に実施せざるを得ない状況となった。
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Strategy for Future Research Activity |
令和2年度に実施予定であったTLR3を活性化するピロリ菌sRNAの解析は、上記の理由により実施することができなかった。一方、令和3年度に予定している生化学的解析は、TLR3を活性化するピロリ菌sRNAの解析と併行させることが可能であるため、これらを並行して実施し、予定期間内に全ての研究を終了する。
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