2020 Fiscal Year Research-status Report
腸管系病原菌が形成するIV型線毛を利用した分泌タンパク質の放出機構解明
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20K16245
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
沖 大也 大阪大学, 微生物病研究所, 特任研究員(常勤) (30845285)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | コレラ菌 / IV型線毛 / 分泌タンパク質 / セクレチン |
Outline of Annual Research Achievements |
コレラ菌や腸管毒素原性大腸菌などの多くの腸管系病原菌は、汚染された飲食物を介して腸管内に侵入すると、線毛と呼ばれる糸状の巨大構造物を菌体表面上に形成するとともに分泌タンパク質を産生し、腸上皮細胞への付着と定着を達成する。その後、増殖した腸管系病原菌は毒素を産生し、様々な病原性を発現する。この定着過程はヒトへの感染を成立させるための最も重要なステップであり、定着が成立しなければ病原性を発現することはできない。本研究では、コレラ菌の付着過程で特に重要であると考えられる分泌タンパク質が、IV型線毛および外膜タンパク質セクレチンとどのような相互作用をし、菌体外に分泌されているのか明らかとする。本研究が目指す定着過程の要となる分泌タンパク質を標的とした創薬は、既存のワクチンなどと異なる新規アプローチであり、その阻害過程は宿主側の免疫機構の成熟度の影響を受けづらいと予測されることから、ワクチンの効果が薄い乳幼児に対しても効果的であると考えられる。また、抗生物質と異なり、細菌を死滅させないことから耐性菌を生じさせづらいという大きな利点もある。すなわち、既存のワクチンや抗生物質に替わる次世代の治療法・感染症予防となる可能性を有している。 本年度は、分泌タンパク質とIV型線毛の相互作用解析を行った。これまで、コレラ菌が産生する分泌タンパク質は、線毛の大部分を構成するメジャーピリンと結合すると考えられていたが、今回の実験で、線毛の先端部に位置し線毛形成に関わると予想されるマイナーピリンに結合するという興味深い知見を得た。この結果は、分泌タンパク質が線毛先端部と結合した状態で菌体外に産生する可能性を示唆している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初予定していた、線毛構成タンパク質と分泌タンパク質間の相互作用解析を実施することができ、コレラ菌の分泌タンパク質がマイナーピリンを結合するという結果を示せたため。
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Strategy for Future Research Activity |
外膜タンパク質セクレチンを大腸菌発現系を用いて大量精製を試みる予定である。精製したセクレチンは膜タンパク質であることから、可溶化に最適な界面活性剤の選択を行う。得られた結晶は大型放射光施設SPring-8において回折測定を実施し、詳細な構造情報を取得する。
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Causes of Carryover |
コロナ禍のため発注予定の物品が令和2年度中に納品されない見込みとなったため。 令和3年度に改めて当該物品を発注し、繰り越した予算を使用する予定である。
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