2020 Fiscal Year Research-status Report
腸管出血性大腸菌の宿主感染ステージに応じた小分子RNAによる病原性発現制御の解明
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20K16248
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Research Institution | Kitasato University |
Principal Investigator |
須藤 直樹 北里大学, 薬学部, 助教 (50736105)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 腸管出血性大腸菌 / 小分子RNA / 転写後発現制御 / ler |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題は腸管出血性大腸菌(EHEC)の宿主細胞接着の各段階におけるEHEC細胞内の全小分子RNA(sRNA)プロファイル、及び病原性遺伝子群の転写調節因子をコードするler mRNAに結合する全sRNAプロファイルを取得し、lerの転写後制御を担うsRNAの同定とその役割の解明を試みるものである。 2020年度はler mRNAに結合するsRNAの新規精製法の構築を行った。これまで行なってきたMS2タグを用いたRNAのアフィニティー精製法(MS2タグ精製法)ではMS2タグを付加したRNAに結合するRNAとタンパク質の両方を共精製できる一方で、MS2タグを付加したRNAにタンパク質を介して結合するRNAも共精製されるため、RNA間の塩基対合により結合するRNAのみを解析することが難しかった。そこで、ソラレンを用いたRNA間の光架橋を利用したMS2タグ精製法の確立を目指した。既知のsRNA-標的mRNAペアとしてRyhB sRNA-sodB mRNAをモデルに、細胞粗抽出液へのソラレンの添加、及び長波長紫外線の照射によるRNA間の架橋を確認したところ、ソラレン添加・光照射依存的にRyhB-sodB mRNAの二者複合体形成が観察され、さらに、この二者複合体形成は塩基対合依存的であった。またRyhB-sodB mRNAの架橋産物を含む試料に短波長紫外線を照射することで、架橋産物の脱架橋が可能であった。現在、この手法を用いてler mRNAに塩基対合するsRNAの同定を行なっている。これまでに細菌研究ではRNA架橋剤としてのソラレンの使用例はなく、本研究により得られた成果は細菌におけるRNA間相互作用の理解に繋がることが期待できる。現在、宿主細胞接着させたEHECのler mRNAに結合する全sRNAプロファイルの取得をソラレンを用いた光架橋法を用いて行なっている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初、2020年度内に培養細胞に接着させたEHECの全sRNAプロファイル、及びler mRNAに結合する全sRNAプロファイルを取得し、それらのデータからler mRNAに結合し、かつlerの発現制御に関わるsRNAを同定する予定であったが、新型コロナウイルス感染症の蔓延に伴う研究活動の制限等が生じたことで、研究計画が遅延した。一方で、本研究課題で予定していたソラレンを用いた新規手法の確立に一定の目処がたった。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度はソラレンを用いたMS2タグ精製法から得たler mRNAに結合するsRNAの網羅的同定を、次世代シークエンス解析を用いて行い、この手法の有用性を確かめ、2021年度内の学会発表・学術論文化を目指す。また当初、2020年度内に行う予定であった培養細胞に接着させたEHECの各感染段階における全sRNAプロファイル、及びler mRNAに結合する全sRNAプロファイルの取得を早期に行う。さらにそれらの結果から推測されるEHECの感染現象で重要な働きをするsRNAやlerの転写後発現制御を担うsRNAについて、遺伝学的、生化学的解析を行うことで生物学的意義や制御メカニズムの解明につなげる予定である。
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Causes of Carryover |
(理由)新型コロナウイルス感染症の蔓延による研究活動の制限等があったことで研究計画の遅延が生じ、予定していた次世代シークエンス解析を当該年度に行えず、また出席を予定していた学会の開催中止やオンライン開催への変更があったため旅費が生じなかった。 (使用計画)当初、当該年度で行う予定であった次世代シークエンス解析やその関連試薬に使用予定である。また研究の進展に伴い当初予定のなかった長時間培養し、経時的に濁度を測定する実験を行う必要が生じたため、小型振盪培養装置への使用を予定している。
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