2021 Fiscal Year Research-status Report
腸管出血性大腸菌の宿主感染ステージに応じた小分子RNAによる病原性発現制御の解明
Project/Area Number |
20K16248
|
Research Institution | Kitasato University |
Principal Investigator |
須藤 直樹 北里大学, 薬学部, 助教 (50736105)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | 腸管出血性大腸菌 / 小分子RNA / 転写後発現制御 / ler / LEE |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題は腸管出血性大腸菌(EHEC)の宿主細胞接着の各段階における、病原性遺伝子群の転写調節因子をコードするlerの転写後制御を担う小分子RNA(以下、sRNA)の同定とその役割の解明を試みるものである。 2021年度は、MS2タグ配列を用いたRNAのアフィニティー精製法(MS2タグ精製法)を用いたler mRNAに結合するsRNAの同定、及びその機能解析を行なった。IPTG誘導系プロモーターの下流にMS2タグ配列を付加したMS2-ler’-‘sfGFP(以下、MS2-ler)、及びMS2-lacZ’-‘sfGFP(以下、MS2-lacZ)のコンストラクトを構築した。このコンストラクトを保持するEHECをIPTG添加培地で培養し、細胞粗抽出液を調製し、MS2タグ精製法によりMS2-ler mRNA、またはMS2-lacZ mRNAを精製した。精製画分から低分子RNAを分画し、次世代シークエンス用サンプルを調製し、次世代シークエンスにより解析した。加えて、その結果の検証のために精製画分のRNAをノーザンブロッティングにより解析した。その結果、MS2-lacZと比較してMS2-lerの精製画分に2つの機能未知sRNAが多く存在していた。2つの機能未知sRNA遺伝子のマルチコピー株を用いてlerの発現変動を解析したところ、2つのsRNAはlerの発現を抑制した。これらの結果は、本研究課題の目的の一部を達成したことを示す。 制御を受けるmRNAの精製産物から制御をするsRNAを同定した例はこれまでに報告がなく、本研究の手法を用いることでsRNAによる制御ネットワークのより詳細な理解に繋がることが期待できる。現在、EHECの宿主細胞接着の各段階における、同定した2つのsRNAの発現パターン、及びler発現抑制の生物学的意義について解析している。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新型コロナウイルス感染症の蔓延に伴う研究活動の制限等が生じたことで、 当初、2020年度内に行うはずであった研究課題を2021年度に繰り下げて実施した。また、培養細胞に接着させたEHECのler mRNAに結合する全sRNAプロファイルを取得する予定であったが、当初の想定より培養細胞に接着したEHECの菌体数が少なくMS2タグ精製を行うために必要な菌体数を確保できず未実施である。そのため、純培養系でler mRNAに結合するsRNAの同定とその機能解析を行い、2つのsRNAがlerの発現を抑制することを示した。 全体の研究期間は2年の予定であったが、想定していない研究活動の制限があったため期間延長の手続きをし、2021年度の計画を2022年度に行う予定である。
|
Strategy for Future Research Activity |
2021年度に同定した2つのsRNAの発現条件を明らかにすることで2つのsRNAによるler抑制の生物学的意義を理解し、加えてler抑制の制御メカニズムの解明を行う。これらの内容を2022年度内に学会発表を行い、学術雑誌(Molecular Microbiology)への投稿を目指す。また、当初2021年度に行う予定であった培養細胞に接着させたEHECの各感染段階における全sRNAプロファイルの取得を早期に行う。この解析結果から同定した2つのsRNAの発現パターン、及びEHECの感染過程で重要な働きをするsRNAを推測し、それらについて遺伝学的、生化学的解析を行いEHECの宿主細胞接着におけるsRNAの役割を明らかにする。
|
Causes of Carryover |
(理由)新型コロナウイルス感染症の蔓延により、参加を予定していた学会の開催中止やオンライン開催への変更があったため旅費が生じなかった。特に参加を予定した国際学会がオンライン開催となったことで海外渡航費用が生じなかった。また、2020年度に行う予定であった次世代シークエンス解析を2021年度に行い、そのため2021年度に行う予定であった解析が未実施であるため次年度使用額が生じた。 (使用計画)当初、2021年度で行う予定であった次世代シークエンス解析やその関連試薬に使用予定である。また研究の総括として学会参加費や論文投稿費として使用予定である。
|