2023 Fiscal Year Annual Research Report
腸管出血性大腸菌の宿主感染ステージに応じた小分子RNAによる病原性発現制御の解明
Project/Area Number |
20K16248
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Research Institution | Kyorin University |
Principal Investigator |
須藤 直樹 杏林大学, 医学部, 講師 (50736105)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 腸管出血性大腸菌 / 小分子RNA / トランスクリプトーム / 3型分泌装置 / LEE / ler |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題は腸管出血性大腸菌(EHEC)の宿主細胞接着の各段階における、病原性遺伝子群LEEの転写調節因子Lerの転写後制御を担う小分子RNA(以下、 sRNA)の同定とその役割の解明を試みるものである。2023年度は、(A)新規ler mRNA結合sRNAの同定と機能解析、(B)宿主細胞接着における3種類のsRNAの役割の解明を行なった。 (A)昨年度までにlerの発現を制御するsRNAを2種(以下、X sRNA、及びY sRNAとする。) 同定したが、2023年度はこれまでに取得したler mRNAに結合するsRNAのトランスクリプトームを再解析した結果、さらに1種のsRNA(以下、Z sRNAとする。)を同定し、lerの発現を抑制することを見出した。 (B)EHECはHeLa細胞と共に培養すると、概ね接着後3時間で細胞表面にマイクロコロニーの形成が始まり(感染前期)、接着後6時間で細胞表面の大部分をEHECが覆う(感染後期)。この感染前期と後期におけるHeLa細胞への接着性を、3種類のsRNAの過剰発現株、及び欠失株を用いて解析した。その結果、過剰発現株では全ての株で、感染前期、後期ともに接着性の低下が見られた。この結果は、3種のsRNAがlerの抑制を介してLEEの発現を抑制し、HeLa細胞への接着性を低下させたことを示す。また欠失株においては、Y sRNAの欠失で感染前期、後期における接着性の有意な上昇が見られた。Y sRNAは感染前期に発現量が増加し、感染後期には減少することが昨年度の解析から見出されているため、Y sRNAは感染前期に発現が上昇し、lerの発現抑制とそれを介したLEEの発現抑制により、過剰な宿主細胞への接着を抑制する働きをする可能性がある。
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