2020 Fiscal Year Research-status Report
ブドウ球菌食中毒の分子レベルでの理解と霊長類嘔吐モデルによる嘔吐活性の解析
Project/Area Number |
20K16249
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Research Institution | Kitasato University |
Principal Investigator |
小野 久弥 北里大学, 獣医学部, 講師 (80704569)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | コモンマーモセット / 肥満細胞 / ブドウ球菌エンテロトキシン / 嘔吐型食中毒 / 受容体 / 細菌毒素 / 脱顆粒 |
Outline of Annual Research Achievements |
ブドウ球菌食中毒は、黄色ブドウ球菌が産生するタンパク質毒素、ブドウ球菌エンテロトキシン(SE) によって起こる公衆衛生領域上重要な食中毒である。SEは90年前にブドウ球菌食中毒の原因毒素であることが報告されていながら、その嘔吐発現の分子機構は未だ不明である。本研究では、SEの嘔吐発現の分子機構の解明を目的とし、小型霊長類のコモンマーモセットを用いることで宿主側の嘔吐に関わる受容体の同定を行う。特に腸管粘膜下組織肥満細胞において、SEが結合し、脱顆粒を引き起こす受容体となっている分子の同定を試みた。 まずコモンマーモセットの腸管由来cDNAライブラリー を用いて酵母ツーハイブリッド法によりSEと親和性を示す分子の検索を行ったが, 親和性を示す分子は得られなかった。つづいてコモンマーモセットの腸管組織からタンパク質を抽出し、プルダウンアッセイにより得られたタンパク質についてファーウェスタン法を用いてSEと親和性を示す分子の検索を行ったところ、SEと親和性を示す分子が複数得られた。この受容体候補タンパク質を同定するために質量分析を行った。得られた候補タンパク質の情報をもとに, コモンマーモセットのmRNAを用いて受容体候補タンパク質の遺伝子をクローニングした。現在in vitroでSEとの親和性を確認している。 また実験に使用するコモンマーモセットを新たに導入し, 今後の研究計画に合わせて繁殖に供した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定通りコモンマーモセットの腸管組織よりSEに高親和性を示す分子が得られた。肥満細胞に発現する分子に加えそれ以外の腸管の細胞に発現する分子も得られたため, 各分子の機能およびSEとの親和性を評価する必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
in vitroでの受容体候補タンパク質の解析を続け, SEとの結合を解析する。また受容体候補タンパク質の腸管組織での分布を免疫組織化学により明らかにする。 当初の計画通り, 得られた候補タンパク質について、当該遺伝子をヒト培養細胞にトランスフェクションし細胞内の分布およびSEとの結合能を共焦点顕微鏡により確認する。またSEと候補タンパク質との相互作用を表面プラズモン共鳴またはマイクロスケール熱泳動により測定し、結合親和性を決定する。加えて, ヒト肥満細胞株におけるSEの作用を解析する。またSEによる脱顆粒のシグナル伝達経路および受容体のノックダウンによる反応性の変化を解析する。 コモンマーモセットの繁殖を継続し, 遺伝子改変動物を作出する準備を進める。
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