2020 Fiscal Year Research-status Report
日本の多剤耐性緑膿菌が産生するカルバペネマーゼの進化様式の解明
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20K16252
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Research Institution | Juntendo University |
Principal Investigator |
菱沼 知美 順天堂大学, 医学(系)研究科(研究院), 助手 (90468570)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 多剤耐性緑膿菌 / カルバペネマーゼ / Pseudomonas aeruginosa / 薬剤耐性因子 / 全ゲノム解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
日本の医療施設における多剤耐性緑膿菌(MDRP)の新興・伝播が医療安全を根底から脅かしている。MDRPが産生するカルバペネマーゼは、抗生剤の切り札であるカルバペネム系薬を分解し、細菌の高度カルバペネム耐性に寄与している。日本で分離されるMDRPのほとんどはIMP型カルバペネマーゼを産生する。しかし申請者は、2012年以降のMDRP臨床分離株の分子疫学解析から、MDRPが産生する流行性カルバペネマーゼが大きく変化していることを見出した。本研究の目的は、2019から2021年に新たに分離されたMDRP臨床分離株の分子疫学解析を通して、カルバペネマーゼの進化様式を解明することである。 2020年度は、2019年に分離されたカルバペネム耐性緑膿菌100株を収集した。これら100株において、主要薬剤の最小発育阻止濃度を測定し、薬剤耐性プロファイルを作成した。また、PCRとサンガーシーケンスにより薬剤耐性因子を同定した。その結果、IMP型産生MDRPの分離率はさらに減少し、緩やかにVIM型産生MDRPの分離率が増加していることがわかった。そこで2012年以降に日本の医療施設で分離されたVIM型産生MDRPについて分子疫学解析を実施した。2012年以降に分離されたカルバペネム耐性緑膿菌1961株中、27株がVIM型産生MDRPだった。これら27株のVIM遺伝子の配列を調べたところ、VIM-1 (7株)、VIM-2 (7株)、VIM-24 (4株)および新規バリアントVIM-60 (5株)とVIM-66 (4株)を同定した。これら27株の全ゲノムをMiseqでシーケンスし、MLST解析および分子系統樹解析を行った。MLST解析の結果、これらの株はST1816 (13株)、ST179 (1株)、ST235 (11株)およびST233 (2株)に属していた。分子系統解析の結果、VIM型産生MDRPは大きく2つのCladeに分かれた。CladeAはST1816に属した株、CladeBはST235に属した株だった。VIM-60およびVIM-66は全てST1816に属しており、約60kbpの同サイズのプラスミドに存在していることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画通り、2019年に分離されたMDRPの解析を実施した。さらに、流行性が示唆されたVIM型カルバペネマーゼ産生MDRPについて分子疫学解析を実施し、論文および学会にて報告した。現在、ST1816に属しているVIM型MDRPについて、プラスミドの比較解析の論文を投稿中である。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年に分離されたMDRPの収集し、薬剤耐性プロファイルの作成および薬剤耐性因子を明らかにする。新規カルバペネマーゼを同定し、その生化学的性状を行う。流行性が示唆されたVIM型カルバペネマーゼにおいては、 ラットを用いてモノクローナル抗体を作製し、イムノクロマトグラフィー法を用いた検出法を開発する。
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Causes of Carryover |
現在投稿中の論文の掲載が2021年度になったため、予定していた投稿料を2021年度に使用する。
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