2020 Fiscal Year Research-status Report
カイコをモデルとした、感染現象の場としての自然免疫システムの包括的理解
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20K16253
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Research Institution | Teikyo University |
Principal Investigator |
宮下 惇嗣 帝京大学, 付置研究所, 講師 (40818308)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | カイコ創薬 / 自然免疫 / 免疫プライマー / primed immune responses |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、病原性細菌が有する動物殺傷のメカニズムについての理解を深めることを主な達成課題とした。日和見感染症を引き起こす緑膿菌の加熱死菌サンプルを用いて、カイコに対して過剰免疫応答を引き起こし、数時間以内で個体死に至る過程を捉えた実験系を確立した。当該条件下では、サイトカイン関連遺伝子の発現量増加、血中に存在するサイトカイン分子の活性化、血液のメラニン化や血中水素イオン濃度の急激な変動を伴う過剰な免疫反応を呈し、緑膿菌サンプルを注射してから数時間でカイコがショック死に至る。さらに、当該条件下でカイコの体液中に誘導される細胞障害性因子に着目し、細胞障害活性を示す物質を生化学的手法によって精製・同定を試みている。一方で、本研究課題におけるもう一つの検討項目である自然免疫活性化物質(Primed immune response誘導物質)の探索に関しては、植物、並びに食経験のある乳酸菌や酵母といった材料の中に活性物質を多数見出し、それぞれ生化学的方法による精製と化学構造の解析に取り組んでいる。いずれも原著論文として投稿中あるいは投稿準備中の段階にあり、素早い研究成果の公表が見込まれる。また、カイコで見出された自然免疫活性化物質の効果を検証するためには高等動物(脊椎動物)を用いた免疫学実験が重要だが、今回新たに魚類(水泡眼金魚)をもちいた免疫学実験系を立ち上げ、その免疫学実験における有用性を示した。当該課題はすでに論文発表を終えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
初年度は2報の論文投稿を見込んでいたが、すでに3つの論文を本研究課題の成果として投稿できたため。
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Strategy for Future Research Activity |
当初設定した課題設定に大きな変更を加えず、現状のまま推進していく。特に、自然免疫に作用する天然由来物質の精製と構造決定を優先課題とする。
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Causes of Carryover |
試薬類を他のプロジェクトと共同購入することにより、購入単価を抑えることができたため。生じた次年度使用額を用いて、次年度の研究規模を当初の計画から大規模化し、さらなる研究成果の達成を目指す。
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