2020 Fiscal Year Research-status Report
Structural Study of Norovirus for Infection and protection
Project/Area Number |
20K16268
|
Research Institution | Center for Novel Science Initatives, National Institutes of Natural Sciences |
Principal Investigator |
ソン チホン 大学共同利用機関法人自然科学研究機構(新分野創成センター、アストロバイオロジーセンター、生命創成探究, 生命創成探究センター, 特任助教 (20755516)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | ノロウイルス / 構造変化 / クライオ電子顕微鏡 / マウスノロウイルス / ヒトノロウイルス / 細胞受容体 |
Outline of Annual Research Achievements |
クライオ電子顕微鏡を用いてマウスノロウイルス(MNoV)感染性粒子とヒトノロウイルス(HNoV)様中空粒子(VLP)の構造解析を行ってきた。最近、MNoVが突起の変化により可逆的な2種類の構造(突起収縮:Aタイプ、突起伸長:Bタイプ)を示すことを発見した。さらに、HNoV GII-3株のVLPの試料中にも同じような二つの構造が存在することを確認してPLOS Pathogens (Song et al、2020)に報告した。そして、さらにノロウイルスキャプシドにおける構造変化のメカニズムとその生理的機能の解明を目指した。 1)MNoVの構造解析:これまでMNoVの二つの構造において各々3.5オングストローム( Aタイプ)と7.3オングストローム(Bタイプ)の分解能で構造解析ができていた。今年度は更なる解析を行い、それぞれ2.7オングストローム( Aタイプ)と5.1オングストローム(Bタイプ)への分解能の向上ができた。 2)HNoV VLPの構造解析:これまでHNoV VLPは9.3オングストローム( Aタイプ)と13オングストローム( Bタイプ)の分解能での構造解析ができていた。今年度は、Aタイプは2.8 オングストロームへ、Bタイプは7.2 オングストロームへの分解能の向上に成功し、以前はできなかった分子モデルの構築ができた。この二つの粒子の大きさは40nmであるが、試料の中には50nmの大きな粒子と、30 nmの小さな粒子も存在し、これらもそれぞれ3.5 オングストロームと3.2 オングストロームの分解能で解析ができた。 3)細胞受容体分子の結合位置の解析:細胞受容体分子CD300lfとウイルス粒子を結合させてクライオ電顕単粒子解析を行い、CD300lfの結合構造について約14オングストロームの分解能での解析ができた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ノロウイルスにおける構造変化のメカニズムを解明するためには可逆的な2種類の粒子構造に対して高分解能での解析が必要である。その意味でMNoVにおいては2種類の構造についてともに分解能が高くなり、より詳細に構造変化のメカニズムを理解できるようになった。HNoV VLPについては、今年度新しくデータセットの収集から始め、Aタイプの構造は近原子分解能のマップが得られて、分子モデルを構築することができた。Bタイプの構造についてはまだ7.2 オングストロームの分解能であるが、Aタイプのモデルを参照することで分子モデルが推定できた。さらに、サイズ50nmの粒子と30 nmの粒子はHNoVの40nm粒子と同じタンパク質で構成されているが、キャプシド構成タンパク質の組み合わせ方が違うものであり、これらの構造からもノロウイルスキャプシドの構築メカニズムについての知見が得られた。CD300lfとウイルス粒子との結合構造の解析はまだ分解能は低いが、X線構造解析からのモデルとは異なる結合様式を示唆した。
|
Strategy for Future Research Activity |
1)MNoV のBタイプに関するクライオ電顕イメージデータ収集を大阪大学蛋白質研究所の300kVクライオ電子顕微鏡を用いて行う。再構築されたBタイプの原子モデルをAタイプの原子モデルと比較して、構造変化が起こる仕組みを原子分解能のレベルで調べる。 2)AタイプとBタイプのMNoV粒子をそれぞれCD300lfと混ぜて氷包埋し、200kVクライオ電顕で構造解析して、CD300lfの結合位置を明らかにする。 3)ノロウイルスの治療薬としてより有効な中和抗体を得るために、抗体のウイルスキャプシド上での結合部位を特定することが重要である。抗体のFabのみの試料を研究協力者の片山博士が作製し、それをMNVと反応させて、その構造を解析する。また、可逆的な2種類の粒子構造における結合能の差も調べる。
|
Research Products
(2 results)