2020 Fiscal Year Research-status Report
骨髄における記憶CD8+T細胞の活性化および維持機構の解明
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20K16281
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
伊藤 健 京都大学, iPS細胞研究所, 特定拠点助教 (60825941)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 骨髄 / 血管内皮細胞 / 記憶T細胞 / 抗原提示 |
Outline of Annual Research Achievements |
骨髄は、造血臓器であると同時に、記憶T細胞や形質細胞の長期間の維持も担う免疫学的にも重要な臓器である。研究代表者はこれまで、骨髄微小環境を構成する血管内皮細胞は、可溶性抗原を効率的に取り込み、少なくともin vitroでは、記憶CD8+T細胞に対して抗原提示する事を明らかにしてきた。本研究では、この結果をさらに発展させ下記の2点を明らかにした。 ①血中の可溶性抗原は、骨髄血管内皮細胞に取り込まれた後、長期間維持される。:蛍光標識した可溶性タンパク抗原をマウスに静脈注射したところ、そのシグナルは、樹状細胞やマクロファージだけでなく、血管内皮細胞にも強く認めた。さらに、このシグナルは、樹状細胞やマクロファージとは全く異なり、最長4週間持続していた。この結果は、骨髄の血管内皮細胞が、取り込んだ抗原を長期間保持する機能があることを示すものである。 ②骨髄血管内皮細胞は、骨髄中の記憶CD8+T細胞を長期間活性化し続ける。:B2m骨髄キメラマウスを用いて、血管内皮細胞を含む骨髄ストロマ細胞のin vivoにおける抗原提示能を明らかにした。また、この抗原提示能は、抗原暴露後最長4週間持続する事も明らかにした。 これらの研究結果は、骨髄血管内皮細胞の抗原提示能をin vivoにおいて明らかにするとともに、樹状細胞やマクロファージとは異なる持続的な抗原提示能を有する事を示すものである。今後、骨髄血管内皮細胞が持続的な抗原提示能を有する事の生物学的意義を明らかにすべく、研究を継続する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
令和2年度前半は、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う緊急事態宣言が発令され、出勤日数の制限、マウスの飼育頭数の制限のため、特にマウスを用いた実験について遅れを生じている。
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Strategy for Future Research Activity |
①骨髄血管内皮細胞の抗原提示能をin vivoにおいて明らかにする。:Tek-CreマウスおよびB2m floxマウスを交配し、血管内皮細胞特異的に抗原提示能を欠損するマウスを作製し、骨髄血管内皮細胞の抗原提示能をより特異的に示す。 ②骨髄血管内皮細胞は、骨髄中の記憶CD8+T細胞を機能的に活性化する事を明らかにする。:OVAを発現する白血病細胞株を作製し、細胞障害活性の特異的な標的にすることで、骨髄中の記憶CD8+T細胞が血管内皮細胞によって機能的に活性化されることを明らかにする。 上記により、骨髄血管内皮細胞の働きをより特異的に、より詳細に明らかにすることができる。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染拡大に伴う、出勤制限、マウス室の頭数制限のため、予定通り研究を遂行できなかったため、やむを得ず解析の一部を翌年に行う計画に変更した。Tek-CreマウスB2m floxマウスの交配は現在は順調にできているため、この解析を来年度順次実施する予定である。
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Research Products
(3 results)