2020 Fiscal Year Research-status Report
CD8T細胞の分化におけるjunBの作用機序の解明
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20K16293
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Research Institution | Okinawa Institute of Science and Technology Graduate University |
Principal Investigator |
平良 直幸 沖縄科学技術大学院大学, 免疫シグナルユニット, 研究員 (40813621)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | CD8 / 転写因子 / JunB |
Outline of Annual Research Achievements |
T細胞の分化制御に対するAP-1転写因子の重要性は数多く報告されている。AP-1転写因子の一種であるJunBがCD4+T細胞の分化に関与していることは報告されているが、JunBのCD8+T細胞分化における機能はほとんどわかっていない。申請者はT細胞特異的JunB欠損マウスを用いてCD8+T細胞分化におけるJunBの役割を解析するために、JunB野生型および欠損型OT-1マウスのCD8+T細胞をドナーマウスに移入しLM-OVAを感染させた。移入したJunB野生型細胞は感染後にJunBの発現が増加し、エフェクター細胞の分化が終了し細胞数の増加がピークになる7日目には顕著に低下していた。一方でJunB欠損細胞はエフェクター細胞の増殖がほとんど見られなかった。そこで感染5日後に移入した細胞を回収し、シングルセルRNA解析を行った結果、アポトーシスの誘導因子であるBcl2L11の発現増加がJunB欠損細胞では起こっており、フローサイトメトリーを用いたタンパク質発現解析でも同様の結果となった。また下流のシグナルであるcaspase-3の発現も亢進していた。これらの結果からJunBはナイーブCD8+T細胞が抗原刺激を受けエフェクター細胞へと分化を遂げる際に細胞の生存に必須であることが明らかとなった。興味深いことにin vitroで培養したJunB欠損細胞は野生型細胞に比べPD-1やTim-3の発現が亢進する結果となった。PD-1やTim-3は疲弊細胞のマーカーとして知られ、疲弊細胞を減少させることが現在がんの免疫療法において最重要視されている。これらの発見はがんの免疫療法においてもJunBが重要な役割を果たす可能性があると考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は予定通りシングルセルRNA解析を進めエフェクターCD8+T細胞の分化においてJunBが細胞の生存に必須であることを明らかにした。さらにJunBがCD8+T細胞の疲弊に関与している可能性も発見した。一方で、予定していたChip-seqやより詳細な機能解明のためRNA-seqが予定よりも進行しなかったため、現在優先的に進めている。しかしながら全体として評価すれば、当初の予定通りおおむね順調に進んでいると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
1)JunBとヘテロダイマーを形成するBATFはCD8+T細胞においてミトコンドリア代謝を変化させることが知られている。そこで、JunB欠損細胞をin vitroで活性化させ、ミトコンドリア代謝の変化があるのかを検証し、細胞代謝におけるJunBの役割を検証する。 2)現在までの研究結果からJunBがエフェクターCD8+T細胞の分化に関して重要な働きをしていることは明らかだが、他のJunタンパク質が重要な働きをしている可能性も考えられる。そこでCRISPR/Cas9システムを利用し、他のJunタンパク質の重要性を解析する。 3)Chip-seqやRNA-seqの解析を進める。また、JunBが制御するクロマチン領域を同定するためにATAC-seqを行うことで、JunBが欠損したことによる遺伝子の発現変化とクロマチン構造変化の関連性を検討する。
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Causes of Carryover |
遺伝子欠損マウスの解析が順調に進んだため、試薬等の使用量が予定より減少した。この研究費は次年度の新規解析方法の導入費用に使用する予定である。
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