2022 Fiscal Year Annual Research Report
腫瘍内に浸潤した免疫細胞中の概日時計機構変容による腫瘍増殖メカニズムの解明
Project/Area Number |
20K16306
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
鶴田 朗人 九州大学, 薬学研究院, 助教 (40847745)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 概日時計 / 腫瘍関連マクロファージ / 腫瘍微小環境 |
Outline of Annual Research Achievements |
免疫機能には明瞭な概日リズムが認められ、このような生体機能の概日リズムは時計遺伝子と呼ばれる遺伝子群によって周期的に制御されている。近年では、24時間型の社会になり通常の生活サイクル(朝起きて夜寝る)が乱れることも多く、不規則な生活習慣に基づく体内時計の乱れは、免疫機能の異常などを介して、がんの進行を助長することが指摘されている。一方で近年、腫瘍組織内の環境(腫瘍微小環境)によって、本来ならば腫瘍の増殖を抑制するはずの免疫細胞が腫瘍増殖を促進的に制御することも明らかにされている。そのため、腫瘍微小環境における免疫細胞の時計遺伝子機能が、がん細胞に対する免疫機能においても重要な機能を持つことが推察されるが、腫瘍微小環境中における免疫細胞の時計遺伝子機能については不明である。そこで、マウス担がんモデルマウスを用いて腫瘍微小環境中の免疫細胞における概日時計機構と免疫機能の関連性について解析を行った。 その結果、マウスB16BL6メラノーマ細胞から単離した腫瘍関連マクロファージ(TAM)中において、免疫チェックポイント関連分子であるProgrammed death 1(PD-1)の発現に、活動期(ヒトでは昼、マウスでは夜)をピークとする明瞭な概日リズムが認められた。この発現リズムの制御メカニズムについて解析を行った結果、時計遺伝子の1種であるDEC2による周期的なp65活性の抑制によってPD-1発現が制御されることが明らかになった。またTAMのPD-1概日リズムに合わせてPD-1阻害剤の投与を行った結果、PD-1の発現が低い時刻と比較して、PD-1発現が高い時刻に投与した場合に抗腫瘍効果が増強することを明らかにした。本研究成果によって明らかになったメカニズムは、ヒトにおけるPD-1/PD-L1阻害剤の投与時刻の差によって生じる効果の差異のメカニズムの一旦を担っている可能性がある。
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