2021 Fiscal Year Research-status Report
多くの癌での予後不良因子PLK1の過剰発現とPARP阻害剤とDNA損傷修復の関係
Project/Area Number |
20K16316
|
Research Institution | St. Marianna University School of Medicine |
Principal Investigator |
佐倉 杏奈 聖マリアンナ医科大学, 医学研究科, 研究技術員 (80626698)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | PLK1 / 腫瘍マーカー / 相同組替え修復 / bioinformatics / 乳癌 / 卵巣癌 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は多くの癌でみられ、予後不良と関連があるPLK1過剰発現が、1) 相同組替え修復に与える影響、2) PARP阻害剤感受性への影響、3) 相同組替え修復を抑制する機序の解明、を検討するものである。1) PLK1過剰発現が相同組替え修復に与える影響は、TCGA (The Cancer Genome Atlas) データベースを用いbioinformaticsで検討した。TCGAには組替え修復不全を示すHR scoreが含まれており、これを用い検討した。予想通りPLK1過剰発現が相同組替え修復を抑制することを確認した。癌細胞株を用いた研究で再現性を検討している。2) PLK1過剰発現がPARP阻害剤感受性に与える影響は、Cell line encyclopedia datasetを用いbioinformaticsで検討した。この結果、PLK1過剰発現がPARP阻害剤に高い感受性を示すことを確認した。癌細胞株、および臨床検体を用いこれらの結果の再現性を検討している。3) PLK1過剰発現が相同組替え修復を抑制する機序の解明は、TCGAデータベースを用いたbioinformaticsによる解析で、PLK1過剰発現がCyclin B1 (CCNB1)とCDK1の発現上昇を伴うことを明らかにした。細胞株を用い、再現性および相同組替え修復を抑制する機序を検討する。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1) PLK1過剰発現が相同組替え修復に与える影響:相同組替え修復不全はヘテロ接合性消失、テロメアアレル の不均衡、大規模な状態遷移をひきおこす。Homologous Recombination deficiency スコア(HRDスコア)はこれらの現象を数値化したものである。TCGA乳癌および卵巣癌データセットにはこのHRDスコアが含まれており、これを用いた検討で、PLK1過剰発現が相同組替え修復を抑制することを発見した。この結果の再現性を、細胞株を用いた実験で検討している。相同組替え修復はRAD51タンパクがDNA二本鎖切断部位に集積して行われる。これを用いた検討で、PLK1過剰発現がRAD51 の集積を抑制することを証明した。 2) PLK1過剰発現がPARP阻害剤感受性に与える影響:Cell line encyclopediaデータセットには700種類の細胞株の遺伝子発現量とPARP阻害薬を含む様々な薬剤に対する感受性が含まれる。これを解析し、PLK1過剰発現がPARP阻害剤に高い感受性を示す結果を得た。細胞株を用いたclonogenic assayによる検討でも、bioinformaticsで得られた結果と同様であった。今後は卵巣癌手術余剰検体を用い再現性を検討する。この検討のために生命倫理委員会での承認を得た。 3) PLK1過剰発現が相同組替え修復を抑制する機序:TCGAデータベースにあるタンパク発現データを用い、PLK1過剰発現がタンパク発現に与える影響を解析した。発現変動遺伝子同定とpathway analysisによる解析で、PLK1過剰発現ではCyclins and Cell Cycle Regulation pathway、特にサイクリンB(CCNB1)とCDK1がupregulationしていることがわかった。
|
Strategy for Future Research Activity |
1) PLK1過剰発現が相同組替え修復に与える影響:BioinformaticsによるTCGAデータセットの解析は終了した。RAD51 集積の検討で再現性も確認した。今後は Assay for Site-Specific HR Activity (ASHRA)を用い再現性をさらに検討する。ASHRAはCRISPR/Cas9 システムを用いgenomeにFLAG-tagをintegrationさせ、integrationの効率から相同組替え修復の効率を推測するものである。今後はこの実験系を用い再現性を確認する。 2) PLK1過剰発現がPARP阻害剤感受性に与える影響:BioinformaticsによるCell line encyclopediaデータセットの解析は終了した。細胞株を用いたClonogenic assayによる検討で、PLK1安定過剰発現株がPARP阻害剤に高い感受性を示すことを確認した。今後は卵巣癌の手術余剰摘出検体を用いた検討も行う。検体は免疫染色でPLK1発現量を定量する。定量は主観性を取り除くためにImageJ IHC Profiler pluginを用いて行う。手術検体は単細胞分離ののちin vitroで薬剤感受性を検討する。 3) PLK1過剰発現が相同組替え修復を抑制する機序:TCGAデータベースを用いたbioinformaticsによる検討で、PLK1過剰発現は CCNB1およびCDK1の発現増加を伴うことを発見した。CCNB1, CDK1の発現量をPLK1安定過剰発現細胞、parental cell両者で比較検討する。CDK1がRAD51をリン酸化することで相同組替え修復をコントロールしていることが証明されている(Mol Cell, 2012)。このリン酸化を介した相同組替え修復への影響を検討していく。
|
Causes of Carryover |
今年度はBioinformaticsによる解析が完了し細胞株を用いた再現性の検討を始めた。しかし研究期間の大部分はbioinformaticsによる解析に費やしたため、培養細胞を用いた再現性の検討は一部のみ行うことができた。また本年度は臨床検体を用いた検討を行うことはできなかった。次年度は細胞株を用いた再現性の検討、臨床検体を用いた検討を行うため今年度使用しなかった分を次年度分 として使用する。
|