2022 Fiscal Year Research-status Report
多くの癌での予後不良因子PLK1の過剰発現とPARP阻害剤とDNA損傷修復の関係
Project/Area Number |
20K16316
|
Research Institution | St. Marianna University School of Medicine |
Principal Investigator |
佐倉 杏奈 聖マリアンナ医科大学, 医学研究科, 研究技術員 (80626698)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
|
Keywords | PLK1 / 相同組換え修復 / PARP阻害薬 / 予後不良 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、多くの癌でみられ予後不良と関連があるPLK1過剰発現が、1) 相同組替え修復に与える影響、2) PARP阻害剤感受性への影響、3) 相同組替え修復を抑制する機序の解明、を検討するものである。1) PLK1過剰発現が相同組替え修復に与える影響は、TCGA (The Cancer Genome Atlas) データベースを用いbioinformaticsで検討した。TCGA datasetに組替え修復不全を示すHRD scoreを算出し元データにintegrateした上で検討した。これにより多くの癌種で検討することが可能になった。この検討で、予想通りPLK1過剰発現が相同組替え修復を抑制することを確認した。約700種類の癌細胞株における遺伝子発現データと抗癌剤感受性データを含むCancer Cell line Encyclopedia (CCE)データセットでも同様にPLK1過剰発現が相同組替え修復を抑制することを確認した。現在癌細胞株を用いた研究で再現性を検討している。2) PLK1過剰発現がPARP阻害剤感受性に与える影響は、CCEデータセットを用いbioinformaticsで検討した。この結果、PLK1過剰発現がPARP阻害剤に高い感受性を示すことを確認した。癌細胞株、だけでなく臨床検体を用いた検討でこれらの結果の再現性を得た。3) PLK1過剰発現が相同組替え修復を抑制する機序の解明は、TCGAデータベースを用いたbioinformaticsによる解析で、PLK1過剰発現がCyclin B1 (CCNB1)とCDK1の発現上昇を伴うことを明らかにした。細胞株を用い、再現性および相同組替え修復を抑制する機序を検討する。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
1) PLK1過剰発現が相同組替え修復に与える影響:相同組替え修復不全はヘテロ接合性消失、テロメアアレル の不均衡、大規模な状態遷移をひきおこす。Homologous Recombination deficiency スコア(HRDスコア)はこれらの現象を数値化したものである。TCGAデータセットに含まれる一部の癌種にはHRDスコアが含まれておりこれを用い検討してきた。今回自分でHRDスコアを算出することにより様々な癌種でのPLK1過剰発現と相同組換え修復不全の関係を検討できるようになった。この研究の質向上のために時間を消費した。この検討で様々な癌種においてPLK1過剰発現が相同組替え修復を抑制することを発見した。次に細胞株を用いた実験で検討している。相同組替え修復はRAD51タンパクがDNA二本鎖切断部位に集積して行われる。これを用いた検討で、PLK1過剰発現がRAD51 の集積を抑制することを証明した。相同組換え修復不全そのものを評価する検討として多くの研究者が用いる実験手法にDR-GFPを用いる実験方法があるが、最近の報告で問題点を指摘されている。新しい手法であるCRISPR-Cas9を用いたASHRAという手法で再検討を始めた。これにより実験の進行に遅れが生じた。 2) PLK1過剰発現がPARP阻害剤感受性に与える影響:CCEデータセットを用いた解析でPLK1過剰発現がPARP阻害剤に高い感受性を示す結果を得た。細胞株だけでなく、卵巣癌手術余剰検体を用いた検討で再現性を確認できた。 3) PLK1過剰発現が相同組替え修復を抑制する機序:TCGAデータベースを用いた検討で、PLK1過剰発現ではCyclins and Cell Cycle Regulation pathway、特にサイクリンB(CCNB1)とCDK1がupregulationしていることがわかった。
|
Strategy for Future Research Activity |
1) PLK1過剰発現が相同組替え修復に与える影響:BioinformaticsによるTCGAデータセットおよびCCEデータセットの解析は終了した。RAD51 集積の検討で再現性も確認した。今後は Assay for Site-Specific HR Activity (ASHRA)を用い再現性をさらに検討する。ASHRAはCRISPR/Cas9 システムを用いgenomeにFLAG-tagをintegrationさせ、integrationの効率から相同組替え修復の効率を推測するものである。今後はこの実験系を用い再現性を確認する。 2) PLK1過剰発現がPARP阻害剤感受性に与える影響:BioinformaticsによるCCEデータセットの解析は終了した。細胞株を用いたClonogenic assayによる検討で、PLK1安定過剰発現株がPARP阻害剤に高い感受性を示すことを確認した。さらに卵巣癌の手術余剰摘出検体を用いた検討も行なった。検体は免疫染色でPLK1発現量を定量し、単細胞分離ののちin vitroで薬剤感受性試験を行い、PLK1安定がPARP阻害剤に高い感受性を示すことを確認した。 3) PLK1過剰発現が相同組替え修復を抑制する機序:TCGAデータベースを用いたbioinformaticsによる検討で、PLK1過剰発現は CCNB1およびCDK1の発現増加を伴うことを発見した。CCNB1, CDK1の発現量をPLK1安定過剰発現細胞、parental cell両者で比較検討する。CDK1がRAD51をリン酸化することで相同組替え修復をコントロールしていることが証明されている(Mol Cell, 2012)。このリン酸化を介した相同組替え修復への影響を確認した。 これらの結果を論文発表する予定である。
|
Causes of Carryover |
今年度は自分自身でHRDが算出できるようになったことから、多くの癌種で検討することが可能になりbioinformaticsによる検討の質が向上した。しかしこれにより培養細胞を用いた再現性の検討は一部遅延が発生した。また培養細胞を用いた検討において、新しい手法ASHRAを用いた検討も新たに加わった。ASHRAを行うためのconstructsの設計に時間を要したため年度を越して費用を使用する必要性が発生した。これらの理由から次年度は細胞株を用いた再現性の検討を行うため今年度使用しなかった分を次年度分 として使用する。
|