2021 Fiscal Year Research-status Report
肺癌の免疫療法耐性獲得におけるIDO1の意義の解明と治療への展開
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20K16321
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Research Institution | National Hospital Organization, Kyushu Medical Center (Clinical Institute) |
Principal Investigator |
上妻 由佳 独立行政法人国立病院機構九州医療センター(臨床研究センター), その他部局等, 呼吸器外科医師 (70847186)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | IDO / 原発性肺癌 / 免疫療法 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は原発性肺癌において免疫療法獲得におけるIDO1(Indoleamine 2, 3-dioxygenase 1)の意義について明らかにすることを目的としている。癌における代謝はWarburg効果に代表されるように腫瘍環境に応じて変化し、そのエネルギー産生に大きな役割を果たす。IDO1はキヌレニン経路におけるトリプトファン代謝酵素である。これまでの報告では、非小細胞肺癌患者においてIDO1活性を反映する血清中のKynurenine/Tryptophane濃度が予後と関連していることや、免疫療法の奏効率と関連していたと報告されている。しかし、免疫治療においてIDOならびにKynurenine経路がどのように寄与しているか、また、治療前後においてどのような変化があるかについては明らかになっていない。 これまでに先行研究として、肺癌切除検体を用いたプロテオミクス解析を行い、340種類の代謝酵素の網羅的解析を行った。その結果、代謝酵素の発現は組織型毎に大きく異なり、特に非小細胞肺癌と小細胞肺癌では代謝酵素の発現量の差は顕著であり、特に小細胞肺癌と非小細胞肺癌の間で大きな違いが見られた。また、臨床病理学的因子によっても活性化される代謝経路や代謝酵素の発現が異なることが明らかとなった。これらの結果から、癌における代謝は分子生物学的に大きな役割を果たし、病態や治療といった臨床からみた側面においても重要な役割を果たしていると考えられた。本研究では免疫治療前後のKynurenine経路を含めた代謝について広く検討を行うことで、免疫治療や耐性獲得における代謝の重要性について検討可能となるものと考え、今後の研究を継続していくこととする。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
本研究は免疫治療におけるIDO1の意義を明らかにすることを目的としており、免疫治療前後の肺組織検体を用いたプロテオミクス解析を計画している。しかし、予定している実験系では解析に腫瘍組織の凍結検体が必要であるが、治療前後に再生検が可能かつ十分な組織量の凍結保存が可能な症例は限られ、症例の集積が本研究における律速段階となっている。 今後は下記に示すように、別の実験系を並行した研究を予定し、研究の促進を図る。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、免疫療法前後で組織採取が可能な症例については症例の蓄積、標本の採取を行う。しかし、前述の通り、組織を用いた実験系のみでは十分な症例蓄積が困難であり、新たな実験系としてより簡便に採取が可能な血漿を用いた実験系を計画する。免疫治療を導入する前後の血液を採取し、プロテオミクス解析を行う。血液の解析はPBMCを用い、血球特異的なたんぱく質や免疫細胞のシグナル伝達経路に関与するタンパク質も併せて解析し、腫瘍免疫と代謝酵素の関係についてより広く解析を行うこととする。 こちらについても組織検体と同様に前向きに症例の蓄積を行うこととする。 検討可能な症例については組織、血漿中の代謝酵素について比較検討を行い、血清中のバイオマーカーの探索を行う。
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Causes of Carryover |
研究計画の遅れにより生じたものであり、前述した研究系の確立により使用予定である。
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