2020 Fiscal Year Research-status Report
がん微小環境におけるVEGFR3非定型的活性化機構の解明
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20K16326
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
周 越 富山大学, 学術研究部薬学・和漢系, 助教 (10733339)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | VEGFR3 / リン酸化 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度はVEGFR3の非定型的活性化を担うリン酸化部位の同定を行った。 VEGFR3の非定型的リン酸化の有無の検討するため、HEK293細胞にVEGFR3を過剰発現させ、様々な刺激を行った後、リン酸化をシフトバンドとして検出するPhos-tag SDS-PAGEを行った。12-O-テトラデカノイルホルボール13-アセタート(TPA)の刺激でVEGFR3のバンドシフトが認められた。また、VEGFR3のキナーゼ欠損体を発現するプラスミドDNA作製し、細胞に発現させたところ、野生型と同様にTPAでバンドシフトが認められた。これらの結果により、チロシンキナーゼ活性に依存しないVEGFR3のリン酸化の存在が明らかになった。次に、このリン酸化部位の同定を行った。TPA 刺激を行ったVEGFR3過剰発現HEK293細胞からVEGFR3を免疫沈降したのち、タンパク質を消化し、VEGFR3のリン酸化を含むペプチドをLC-MS/MSで分析した。その結果、データベースには登録されていないVEGFR3のリン酸化部位が見つかった。そのリン酸化部位をアラニンに置換した変異体VEGFR3発現プラスミドDNAを作製し、細胞に導入し、TPAを作用させた。野生型とは異なり、Phos-tag SDS-PAGEでVEGFR3のバンドシフトが認められなかった。このことから、VEGFR3の非定型的リン酸化部位が同定できた。また、その制御機構を調べるため、様々なキナーゼ阻害剤を作用させたのちにTPAで細胞を刺激し、VEGFR3のバンドシフトを検出した。その結果、VEGFR3の非定型的リン酸化を誘導するキナーゼを同定することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
VEGFR3の非定型的リン酸化の同定に時間が要した。初めはこれまでに同定されていたリン酸化部位に対する変異体VEGFR3発現プラスミドDNAを作製し、Phos-tagバンドシフトの変化からリン酸化部位の同定を目指したが、いずれの部位においても変化が認められなかった。その後、実験系を質量分析法にシフトしたところ、目的のリン酸化部位を同定することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
来年度は、同定したリン酸化部位を特異的に認識する抗リン酸化抗体を作製し、生理条件下でリン酸化が誘導される条件を明らかにする。また、がん細胞株や血管・リンパ管内皮細胞を用いて同定したリン酸化部位の機能を明らかにする。
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Causes of Carryover |
同定したリン酸化部位を特異的に認識する抗リン酸化抗体を作製する予定であったが、その同定に時間が要したため、今年度中に抗体を作製することができなかった。また、コロナ禍により、旅費は使用しなかった。以上のことから、次年度使用額が生じた。次年度使用額は抗体作製や細胞、プラスミドDNAの購入費に充てる予定である。
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