2020 Fiscal Year Research-status Report
レンバチニブの肝癌免疫微小環境への影響についての検討
Project/Area Number |
20K16332
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
大野 敦司 広島大学, 医系科学研究科(医), 助教 (80774645)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 肝癌 / 肝細胞癌 / レンバチニブ / シンジェニックマウスモデル / 抗PD-L1抗体 / 微小環境 |
Outline of Annual Research Achievements |
レンバチニブ(LEN)は元来ヒトに対する受容体型チロシンキナーゼ阻害剤であるため、まずマウスモデルにおいて抗腫瘍効果を有することを確認する必要があると考えた。10週齢のC57BL6の右背部皮下に5×10^5個 のHep55.1cを注射し、肝癌皮下マウスモデルを作成し、LEN(10mg/kg/day)または生理食塩水の経口投与を行い、ノギスで測定し、腫瘍サイズを算出した。LEN投与群で腫瘍の増大は抑制に抑制されたことから、LENはHep55.1cを移植したシンジェニック肝癌モデルでも抗腫瘍効果を発揮することが明らかとなった。一方で、皮下移植モデルの腫瘍を摘出し、抗CD45抗体でポジティブセレクションを行った腫瘍浸潤リンパ球のFACSでの解析では、95%以上の細胞が死細胞であり解析困難であった。摘出した腫瘍の切断面の肉眼所見上も中心部は壊死を来していた。 次に、肝左葉に5×10^5個 のHep55.1cを注射して同所移植モデルを作製した。移植後、10日目より、マウスを4群に振り分け、以下の治療を行った。①LEN+抗PD-L1抗体、②LEN単独、③抗PD-L1抗体単独、④Vehicle。LENは皮下モデルと同様に、抗PD-L1抗体はanti-mouse PD-L1 (B7-H1) (Clone:10F.9G2)を用い、200 μg/mouse x 3日毎の腹腔内投与を、コントロールには、rat IgG2b isotype control(Clone:2A3)を使用した。治療開始10日目に解剖し、肝臓表面からの腫瘍占拠面積を計測した。腫瘍増大抑制効果は、各単独投与群で同等、併用群で最も強かった。また、腫瘍内部の壊死もなく、FACSでの腫瘍浸潤リンパ球の解析も可能であり、CD8陽性T細胞のポピュレーションは併用群で最も高く、LENと抗PD-L1抗体のシナジー効果を裏付ける結果であった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
肝同所移植モデル作製において,当初穿刺部からの細胞の漏洩により腹膜播種を来たし,腸閉塞により早期に死亡していたが,マトリゲル濃度の調整及び,注入後にタコシール組織接着用シート(CSLベーリング)を貼るなどの工夫により,安定的に腹膜播種を来さず,3週間で肝臓の2/3が腫瘍に置換するモデルの作製に成功した
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Strategy for Future Research Activity |
摘出した腫瘍試料を用いた免疫染色、RNAseqを行い、LEN、抗PD-L1抗体、およびその併用療法の免疫微小環境に与える影響について解析を行う。また、血清中および、腫瘍中のサイトカインの測定をマルチプレックスルミネックスアッセイを用いて行う。これらの結果をもとに、THP-1やLX-2等の細胞株を用いて、tumor-associated macrophage(TAM)、Cancer associated fibroblasts(CAFs)等の個々の免疫微小環境構成細胞に与える影響についても検討を行う。
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Causes of Carryover |
令和2年度は肝同所移植モデルの作成の際に穿刺部からの細胞の漏洩により腹膜播種を来す等の問題が生じたことにより当初計画より遅延が生じ、マウス試料を用いて行う免疫染色やRNA-seqについて次年度使用額が生じた。現在はマウスモデルを用いた治療実験は終了しており、試料も回収、保存している状況であり、次年度使用額は令和3年度の予算とあわせ、RNA-seq,免疫染色,マルチプレックスルミネックスアッセイを用たサイトカイン解析等のダウンストリームの解析に使用する。
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