2020 Fiscal Year Research-status Report
がん細胞の分子標的薬に対する抵抗性とカルシウムシグナルの関連
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20K16338
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Research Institution | Iwate Medical University |
Principal Investigator |
開 勇人 岩手医科大学, 医歯薬総合研究所, 任期付助教 (50847358)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 薬剤耐性 / がん細胞株 / カルシウム / 逆相タンパクアレイ |
Outline of Annual Research Achievements |
薬剤抵抗性をもつ再発がんは難治性である。この課題を解決するために、癌細胞の薬剤抵抗性のメカニズムにおける細胞内カルシウムシグナル(数秒から数分の短い時間に生じる細胞内カルシウム濃度の変動を指す)の関与について研究を行った。カルシウムシグナルは生物においてセカンドメッセンジャーとして広く用いられているが、癌細胞における役割、特に薬剤抵抗性に関連する報告は乏しく、抗癌剤によって誘導されるかも不明であった。始めに、分子標的薬や5-FU等の従来の抗癌剤を用い、抗癌剤がカルシウムシグナルを誘導するか観察を行った。5-FU等の従来の抗癌剤において、カルシウムシグナルの観察に成功し、細胞株の種類によって特徴的な変化を確認した。一方で、Gefitinib等の分子標的薬によって誘導されるカルシウム濃度の変動は小さく、細胞株間での比較が困難であった。分子標的薬に対する癌細胞の応答にカルシウムシグナルが用いられているかを評価するためには、カルシウムシグナルを攪乱することができるRuthenium Redなどのカルシウムチャネル阻害剤を用い、遺伝子発現・タンパク発現・薬剤抵抗性の評価を行うことが有効であると考えられる。また、それぞれの分子標的薬単体の処理において、コロニー形成がどの程度阻害されるか細胞株ごとに評価し、遺伝子・タンパク発現解析における指標を作成している。FGFRを標的とするErdafitinibでは、HCT116などのFGFR変異を持つ細胞株でコロニー形成が阻害されやすいと予想されたが、FGFR変異を持たないMKN45など一部の細胞株の方がコロニー形成の阻害がされやすいなどの例も見られ、分子標的薬の評価であっても1つの遺伝子変異に限らないがんシグナルパスウェイごとの評価が必要であると考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
予定していた分子標的薬を含む抗癌剤を使用したカルシウムシグナルの観察の一部や、コロニー再増殖の実験を実施し、一定の結果を得ることができた。一方で、学外の施設において行う必要があるカルシウムシグナルの観察は、新型コロナウイルス感染症の蔓延により十分に行えていない。また、細胞株のタンパク抽出を行い、逆相タンパクアレイでの網羅的なタンパク発現解析を予定していたが、マイクロアレイヤー故障のため行えていない。英国の技術者による修理の必要があるが、新型コロナウイルス感染症の蔓延によって再開の目途は立っていない。
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Strategy for Future Research Activity |
分子標的薬によるコロニー形成抑制の評価は継続して行い、より多くの分子標的薬と細胞株の組み合わせのデータを蓄積する。また、がんシグナルパスウェイに着目し細胞株を2群に分け、どのシグナルパスウェイがその分子標的薬において重要であるか評価する。 カルシウムシグナルの観察については、分子標的薬が誘導するカルシウムシグナルの細胞株間の比較を行えるように、よりKd値の低いカルシウムセンサー蛍光試薬の利用を検討している。学外での実験が可能な状況になり次第着手する予定である。 網羅的なタンパク発現解析を計画していたが、マイクロアレイヤーが使用できない状況であるため、条件や細胞数を絞り手作業によるドットブロッティングを行う。
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Causes of Carryover |
概ね計画通りに研究費を使用している。 次年度使用額は、細胞株の管理に必要な費用に充てる。
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