2021 Fiscal Year Research-status Report
がん細胞の分子標的薬に対する抵抗性とカルシウムシグナルの関連
Project/Area Number |
20K16338
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Research Institution | Iwate Medical University |
Principal Investigator |
開 勇人 岩手医科大学, 医歯薬総合研究所, 助教 (50847358)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | カルシウムシグナル / 薬剤耐性 / カルシウムチャネル / カルシウムポンプ |
Outline of Annual Research Achievements |
薬剤抵抗性をもつ再発がんは難治性である。数秒から数百秒の間に生じる細胞質内のカルシウムイオン濃度変化であるカルシウムシグナルは、生物においてセカンドメッセンジャーとして広く用いられているが、薬剤抵抗性の獲得メカニズムにおける関与は研究が少ない。そこで、カルシウムシグナルに着眼し、Gefitinibなどの分子標的薬に加え、5-FU・シスプラチン・ドセタキセルなどの従来の抗がん剤を細胞株に処理し、その際に誘導されるカルシウムシグナルを観察した。これらの結果から、5-FU処理では顕著にカルシウムシグナルが誘導されることが示唆された。特に5-FUに薬剤抵抗性を示す細胞ではカルシウムシグナルの増加スピードと減少スピードが速く、細胞質へのカルシウムイオンの流入量と排出量が親株に比べて多いことが考えられた。そこで、この原因と考えられるカルシウムイオンチャネルとカルシウムイオンポンプをRNAseqのデータ解析によって同定した。これらの薬剤抵抗性への寄与を評価するために、siRNAによるノックダウンを行い、薬剤感受性試験等を実施する。当該年度はその予備実験としてウエスタンブロッティングによりタンパク発現を評価し、各試薬の最適濃度と処理時間を検証した。また、新規に共焦点レーザー顕微鏡が導入され、学内におけるカルシウムシグナルの観察が可能となったため、カルシウムセンサーとして用いている蛍光物質の蛍光強度減衰の経時変化のベースライン決定や、その補正式の作成を行った。これにより、現在までに使用した細胞株以外のカルシウムシグナルの観察も容易に行えるようになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
逆相タンパクアレイでの網羅的なタンパク発現解析を予定していたが、マイクロアレイヤー故障のため行えていない。英国の技術者による修理の必要があるが、新型コロナウイルス感染症の蔓延によって再開の目途は立っていない。一方、学外の施設において行う必要があるカルシウムシグナルの観察は、新型コロナウイルス感染症の蔓延により十分に行えていなかったが、所属機関に機器が導入されたため、今年度からは十分に行うことができる見込みである。
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Strategy for Future Research Activity |
現在のところ、分子標的薬によって誘導されるカルシウムシグナルは観察できていない。カルシウムシグナルの観察が再開できるようになったため、分子標的薬が誘導するカルシウムシグナルの細胞株間の比較を行えるように、よりKd値の低いカルシウムセンサー蛍光試薬の選定を行う。これと並行して、現在までに良好な結果が見られている5-FUによって誘導されたカルシウムポンプの薬剤抵抗性獲得への関与を検証する。具体的には、siRNAによって標的のカルシウムポンプのタンパク発現量をノックダウンし、その際の薬剤感受性の測定や、実際に誘導されるカルシウムシグナルの形状などの形質を評価する。
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Causes of Carryover |
研究立案当初に予定されていた逆相タンパクアレイ解析が機器の故障によって行えていないことや、新型コロナウイルス感染症の蔓延によって他機関において実施予定であったカルシウムシグナルの観察が十分に行なえていなかったため、次年度使用額が発生した。逆相タンパクアレイは機器の修理ができないため、ウエスタンブロッティングに切り替えて実験を実施する。また、共焦点レーザー顕微鏡は所属機関に導入されたため、実験を再開したため、それらの費用に充てる。
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