2020 Fiscal Year Research-status Report
MYCNとEZH2が引き起こすエピゲノム異常による神経芽腫発生機構の解明
Project/Area Number |
20K16355
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
坪田 庄真 名古屋大学, 医学系研究科, 助教 (10801657)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 神経芽腫 / MYCN / EZH2 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、神経芽腫のがん遺伝子として知られるMYCNによる発がんにおいて、MYCNとエピゲノム制御複合体PRC2の責任分子であるEZH2が物理的に結合する意義・その機構解明を目的としている。具体的には、(1)MYCNとEZH2の結合様式を明らかにし、(2)EZH2と結合しないMYCN変異体を用いて神経芽腫の発生を検証し、(3)またそれぞれのゲノム上での局在やエピゲノム修飾、遺伝子発現を網羅的に解析している。(1)について、MYCNの各ドメインを欠損した変異MYCNを作成し、神経芽腫細胞株SH-SY5Yで強制発現させ、近接ライゲーションアッセイにより細胞内でのEZH2との結合を調べたが、全ての欠損変異MYCNがEZH2と結合してしまうという予想外の結果となった。(2)についてはEZH2との結合ドメインが明らかになっていないため、検証できていない。(3)については、MYCNが増幅している神経芽腫細胞株KELLYを用いて、EZH2のChIP-seqを行い、MYCNやその他ヒストン修飾のChIP-seq公共データと統合し、ゲノム上での結合領域を調査した。興味深いことに、MYCNが結合しているプロモーター領域でEZH2が共に結合しており、ターゲット遺伝子の発現を正に制御している可能性が示唆された。これらのことから、今後は神経芽腫におけるEZH2の機能(特に遺伝子発現を亢進する可能性)に着目して研究を進めていく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究開始時には、EZH2がMYCNのMyc box 3(MB3)ドメインを介して結合するという報告があるが、予備実験でMB3欠損MYCNもEZH2と結合することが分かっていた。そのため、EZH2と結合するMYCNのドメインの再調査を行った。具体的に、MYCNの各ドメインを欠損した変異MYCNを複数種類作成し、神経芽腫細胞株でレンチウイルスにより強制発現させ、近接ライゲーションアッセイを行い、細胞内での変異MYCNとEZH2との結合を調べた。MYCNの全長に渡って複数の変異MYCNとEZH2との結合を調べたが、予想外のことに全ての変異MYCN発現細胞でEZH2との結合が確認された。実験手法による偽陽性の可能性もあるが、現状MYCNとEZH2の直接結合の可能性は低いと考えており、他のタンパク質やlncRNAを介して相互作用しているのではないかと考えている。EZH2と結合しないMYCN変異体を用いた神経芽腫の発生を検証する予定だったが、上述の結果により方向転換する必要が生じた。一方、ゲノム上での局在をChIP-seqで解析した結果、興味深いことにMYCNが結合している全てのプロモーター領域にEZH2も結合し、それらターゲット遺伝子は発現しているということが明らかになった。このことから、EZH2は遺伝子発現を負に制御する因子として知られているが、逆に正に制御し、それが神経芽腫にとって重要な機能である可能性が出てきた。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の計画と異なる結果を得てしまったため、計画内容の修正を行い、今後はEZH2がどのように神経芽腫で重要な機能を果たしているか、特に遺伝子発現を正に制御する可能性について検証していきたい。興味深いことに、神経芽腫細胞においてEZH2のメチル基転移酵素活性を阻害してもアポトーシスは誘導されないが、ノックダウンでアポトーシスが起きる、という先行研究がある。すなわち、EZH2は酵素活性非依存的に神経芽腫の細胞維持に関与している可能性が高い。そこで、阻害剤による酵素活性阻害と、ノックダウンによるEZH2の欠損が神経芽腫の表現型に及ぼす影響を再調査し、様々なEZH2変異体を用いてどのような機能が神経芽腫維持に関わっているかに着目していく。
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