2021 Fiscal Year Research-status Report
白血病幹細胞の不均一性とゆらぎの解析と白血病治療への応用
Project/Area Number |
20K16356
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
新開 泰宏 大阪大学, 医学系研究科, 招へい教員 (70791614)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 白血病幹細胞 / ESAM / 不均一性 |
Outline of Annual Research Achievements |
我々はヒト骨髄性白血病臨床検体および白血病細胞株において、同一クローン内でもESAM発現に不均一性があり、白血病幹細胞が増殖に伴い不均一な白血病幹細胞集団を再構成する結果を得た。さらに白血病幹細胞において多様な遺伝子が不均一な発現様式を示すが、それらの中でTGFβシグナル経路が白血病幹細胞の変動と不均一性の誘導において、中心的な役割を果たしていることを明らかにしていた。 またTGFβシグナルを阻害することが、AML細胞にどのような影響を与えるかを検討した。我々はTGFβシグナルの阻害のため、TGFβ受容体であるTGFβR1の選択的阻害薬であるSB525334を用いた実験を行った。AMLの細胞株であるKG1aにおいて、SB525334の添加は、ESAMの発現変化を阻害した。それだけではなく、SB525334の添加はKG1a細胞の増殖抑制を誘導し、アポトーシスを誘導した。また、KG1aにダウノルビシンを投与する際、SB525334の添加はダウノルビシンによる抗腫瘍効果を増強した。さらに、ヒト患者検体のAML細胞においても、培養系においてSB525334の添加はESAMの発現変化を阻害した。一部のAML患者検体においてはSB525334単剤で白血病細胞の増殖抑制・細胞死誘導効果をもたらした。単剤では効果が得られなかった患者検体についても、ダウノルビシンによる抗腫瘍効果を増強することが確認された。これらの実験から、ヒトAMLにおけるTGFβシグナルの阻害は、白血病幹細胞が有する不均一性と変動性を阻害し、白血病の細胞死を誘導するという重要な知見を得ることができた。 本年度はさらに、共免疫沈降および蛋白質量分析によるESAMの下流分子の同定を目指した。実際にいくつかの蛋白を同定することができたが、実際の機能的意義は不明であり、今後CRISPR/Cas9システムを用いたESAMやその下流シグナルの制御を通して解析する予定としている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の研究計画に基づき、ヒト白血病幹細胞の不均一性の基盤となる分子機序に、TGFβシグナルが関与することをより明確にすることができた。さらに、そのシグナルを制御することにより、ヒト白血病細胞株のみならずヒト臨床検体白血病細胞においても、白血病細胞の細胞死と増殖抑制を誘導するという重要な知見を得ることができた。以上の点から、本研究はおおむね順調に進展していると判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
今後はTGFβシグナルの阻害が急性骨髄性白血病に与える影響を、免疫不全マウスを用い、より生体内に近い環境で解析していく予定である。また、共免疫沈降および蛋白質量分析によるESAMの下流分子の同定を引き続き目指し、同定できた蛋白においてCRISPR/Cas9システムを用いたESAMやその下流シグナルの制御を通して解析する予定としている。
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