2020 Fiscal Year Research-status Report
大腸癌転移巣のPDXモデルライブラリーを用いた腫瘍不均一性と治療抵抗性機序の解明
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20K16360
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
永吉 絹子 九州大学, 大学病院, 助教 (90761015)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 大腸癌 / 肝転移 / 腫瘍不均一性 / PDXモデル |
Outline of Annual Research Achievements |
転移性大腸癌は予後不良であり、大腸癌転移巣の治療不均一性や抵抗性の獲得機序の解明が必要である。また、近年、癌組織の疑似的モデルとして注目されているpatient-derived xenograft(PDX)モデルは腫瘍の微小環境まで含めてヒト腫瘍の特性がマウスの生体内で保持されており、個々の患者の癌組織を実験動物レベルで再現することができる。本研究では、ヒト大腸癌原発巣及び転移巣切除組織からPDXモデルライブラリーを作成し、それぞれの腫瘍間あるいは腫瘍内の不均一性(heterogeneity)を考慮する上で重要な癌微小環境を再現した腫瘍モデル基盤を構築する。さらにscRNAseqにより1細胞毎の網羅的発現解析を行い、転移巣に特異的な細胞集団・化学療法抵抗性に関与する細胞集団を同定する。多角的な機能解析により大腸癌転移成立・維持機構や化学療法抵抗性機序を解明し、これまでにない大腸癌転移制御法を開発することを目的とする。 本年度は、胃癌、食道癌、大腸癌など複数の種類の固形がんの手術標本を対象にシングルセルRNAライブラリー作成を行い、NGSで解析した。NGS解析後のデータは、Rパッケージ Seuratを用いて単一細胞由来のmRNA発現からその細胞集団の特徴や機能に着目し解析を行っている。現在では十分量の単一細胞懸濁液を安定して作成することに成功しており、固形がん30症例を超えるライブラリー作成を行ってきた。 また、当研究室では膵癌のPDXモデルをすでに作成しており、大腸癌原発巣や転移巣を用いたPDXモデルの作成を試みている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
手術切除標本をもとに十分量の単細胞懸濁液を作成すること、ライブラリー作成を行うこと、それぞれにおいて安定した結果を得ることができるようになり、それらをもとにNGSで得られたデータの解析についても習熟してきている。 しかし大腸癌原発巣、転移巣を用いてのPDXモデルの作成が遅れている。PDXモデルが作成できれば、scRNAseqによる単一細胞レベルでの網羅的遺伝子発現解析から転移に関与する細胞集団の同定や、さらに治療実験により治療抵抗性に関与する細胞集団および遺伝子発現についての検索が可能になると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
まずは、膵癌のPDXモデル作成に倣い、大腸癌原発巣および転移巣のPDXモデル作成を行う。PDXモデル作成後、原発巣、転移巣それぞれのPDXモデルから癌周囲微小環境下での異なる機能を有した新たな細胞集団を同定し、転移の機序の解明につなげる。さらにPDXマウスを用いた治療実験により、治療抵抗性のメカニズム解明を図り、新規治療法の確立を目指す。
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Causes of Carryover |
大腸癌原発巣、転移巣を用いてのPDXモデルの作成が遅れているため。 次年度はscRNA受託解析や研究用試薬などに使用する予定である。
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