2020 Fiscal Year Research-status Report
シングルセル解析から解き明かすEGFR変異陽性肺がんの薬剤耐性変異獲得メカニズム
Project/Area Number |
20K16370
|
Research Institution | Japanese Foundation for Cancer Research |
Principal Investigator |
瀬戸 陽介 公益財団法人がん研究会, がん化学療法センター 基礎研究部, 研究員 (50738614)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | シングルセル / 肺がん / 薬剤耐性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、治療前のEGFR 活性化変異陽性肺がん患者由来のがん細胞集団(治療前細胞群)と、そこから実験的に樹立した薬剤耐性細胞株(薬剤耐性細胞群)、そして実臨床での薬剤治療によって出現したT790M 耐性変異陽性細胞集団(T790M変異細胞群)を用い、薬剤耐性変異獲得に至る分子メカニズムをシングルセルRNA-seqやシングルセルATAC-seq、ゲノムワイドな変異解析手法を組み合わせることで解明することを目的としている。今年度は、シングルセルRNA-seqによる遺伝子発現解析から、耐性変異獲得前の薬剤耐性細胞株ではEGFR阻害剤処理によって細胞集団が大きく変化することを見出した。耐性変異獲得前の薬剤耐性細胞株はEGFR阻害剤存在下では上皮間葉転換を起こすことが分かっており、シングルセルRNA-seqの結果は観察される形態的変化を反映するものだった。さらに、これら薬剤耐性細胞株では、EGFRシグナル以外のバイパス経路が薬剤耐性変異獲得前の初期薬剤耐性に関与していることが示唆された。また、治療前後のがん細胞集団を用いたゲノムワイドな変異解析の結果から、治療後に出現したT790M 耐性変異陽性細胞集団は、治療前のがん細胞集団のごく少数の細胞集団を起源に持つことが示唆された。さらに、シングルセルRNA-seqと同様に、治療前のがん細胞集団、薬剤耐性細胞株、耐性変異陽性細胞集団それぞれにEGFR阻害剤処理を行い、シングルセルATAC-seqを実施した。現在、次世代シーケンサーから得られた配列データの解析を進めているところである。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
シングルセルRNA-seqから得られた遺伝子発現データやゲノムワイドな変異データの解析用パイプラインの構築と解析を予定通り進めることができた。その結果、がん細胞集団がEGFR阻害剤に応答して大きく変化すること、さらに耐性変異を持たないがん細胞集団では、EGFRシグナル以外のバイパス経路が初期耐性に関与していることを明らかにした。また、シングルセルATAC-seqも計画通りに実施することができている。
|
Strategy for Future Research Activity |
本年度はシングルセルATAC-seqから得られたデータの解析を進めることで、EGFR阻害剤に応答するクロマチン構造の変化を明らかにし、薬剤応答遺伝子の発現をコントロールするモチーフ探索を行う。さらに、遺伝子の発現量やクロマチン構造の違いによって突然変異率が変化するかどうかを調べることで薬剤耐性変異獲得メカニズムの解明を目指す。
|
Causes of Carryover |
新型コロナの流行に伴い、参加する予定であった国際学会、並びに国内学会への参加が出来なくなったため。
|
Research Products
(2 results)